蔡総統が自分が中国人と発言するも、意味は大違い

切り取り報道って良くないですよね。ただ、現代人は時間がないのでまとめサイトのように長い文章を数分で読み切れるくらいにまとめてくれたり、国会答弁のように長い時間かかって話した内容をダイジェスト版のように手短にまとめてくれるのは非常にありがたいですよね。ただ、気を付けなければならないのは、先ほど述べたように切り取り報道で、編集の仕方によっては情報発信者本人の意志とは正反対のイメージを視聴者に植え付ける事が可能ですよね。
では、本日は、単純に台湾嫌いなのか、日台分断工作なのか分かりませんが、蔡英文総統に対する切り取りによる印象操作的な情報がSNS上で日本語で出回るようになってきましたので、私が反論してみたいと思います。まずはこの動画をご覧ください。

  これは2000年に蔡総統が台湾の国会に位置する立法院に出席した際に発言した映像の一部となります。今ネットに出回っている映像を見るとあたかも蔡総統が中国人であることを認めているような取り上げ方ですが、どうしてこのような発言をしたかに一切触れていません。では一体、なぜこのような発言をしたのかを台湾最大の新聞社自由時報が記事にしていましたので、和訳したいと思います。

蔡総統が自分が中国人と発言もするも
意味は大違い

  芸能人の羅志祥氏が中国のイベントに参加した際に「我々は皆中国人である」と発言し、多くのネットユーザに集中砲火を受けたが、PTT(2ちゃんねるのような巨大電子掲示板)では過去立法院(国会に相当)の議事録から蔡英文次期総統(当時)が過去に自身が中国人であると発言したが、それは中国の本を読んで育ったからであり、文化的に中国文化に属していることを意味し、決して国籍の話ではないとしている。ネット民は「私は中国人と言っているが、意味は大違い」だと指摘している。

  あるネット民は民国89年(2000年)の立法院議事録を探り、その中で蔡英文氏が「私は中国人であることが悪いとは言っていません。ただこの発言が政治的リスクになってしまうことが怖いだけです。私は台湾人で間違いありませんし、私は中国人です。なぜなら私は中国の本を読んで育ち、中国式の教育を受けたからです。ですが、台湾は中国の文化的影響を受けた以外にも多くの文化的影響を受けている多元的な社会であることを忘れないでください。」と述べていることを見つけた。

  蔡英文氏は更に、同じ中国文化であっても「台湾の中国文化と大陸の中国文化が同じかどうかはまた別の問題である」ことを強調していた。ネット民は「蔡さんは文化的には中国人と認めたが、国籍も中国だと認めている訳ではない!」と指摘した。また柯文哲氏は以前「政治上は台湾人だが、文化的には私は中華文化圏だからこの点は否定しない」と蔡英文氏の主張に呼応した。

もうかれこれ20年以上の前の発言。当時は台湾が民主化されてからまだ4年しか経っておらず、それまで徹底的に「中国人だ」と教育されてきた背景を考えると、今これを取り上げるのはかなり不適切と個人的に思う

はい、以上が記事の和訳でした。

  この議事録を見ると2000年当時蔡英文氏は中国に対する関連業務を行なう「大陸委員会」という機関の主任委員、つまりは対中カウンターパートのトップに就任しておりました。また当時世間は「私は台湾人でもあり、中国人でもある」という意識の人が44%もいる輿論の中で、立法院で中国国民党から「あなたは大陸委員会のトップなのですから、台湾人でもあり中国人であるはずですが、『私は中国人です』ということに何か不都合があるのではないか、と疑っています」と質問された後の回答が先ほど記事内で紹介した「私は中国人である」という部分になります。「大陸委員会」は市場経済へ移行し経済活動が活発化してきた中国との事務的な手続きに大きな問題を抱えていた台湾がそれを解決するために立ち上げた組織であり、政治的・経済的において対中政策で重要な役割を担っている訳で、中共も台湾国民、そして所謂外省人たちも、この大陸委員会の一挙手一投足に注目しているわけですから、公での発言には慎重を期していた蔡英文氏が、先ほどの質問をされたために、やむを得ずに「私は中国人だ」と答えざるを得ない状況に置かれたという背景を理解しなければなりません。そして「私は中国人だ」発言の後に、「台湾文化内の中国文化は全てではない」と述べており、はっきりと主張していないものの「台湾は台湾文化である」という雰囲気が出る主張をしているのを感じられます。

  こういう背景があるにも関わらず、発言の部分だけを切り取り、あたかも蔡英文総統が自身が中国人であることを認めた、的な情報発信をしているメディア、そして最近では個人でも発信しているのを目にしたので、反論動画を作った次第でございます。
もしかしたら既に冒頭で紹介した「私は中国人です」動画をご覧になった視聴者様も多いかもしれませんが、その時に「あれ?なんで蔡英文総統が「私は中国人です」なんて言うんだろう?」と疑問に持たれた方は多いかと思いますが、こういう背景だったと分かれば、その疑問は解消されたかと思います。

  ちなみに2016年の総統選の前も、2020年の総統選の前も、浮動票を蔡総統へ入れないようにするために今は放送免許更新を許されずテレビ放送が許されなかった中天ニュースは、この映像をジャンジャン流していました。ちなみに中天ニュースの母体である旺旺グループは中国で財を成した企業で、かなり親中的な主張をしており、時にはデマを垂れ流すメディアでしたので、放送免許が更新されなくてよかったと思います。
  なお、台湾は日本とは違い様々な立場のメディアが存在しており、それを大雑把ですがまとめてみましたので、参考にしていただければと存じます。

2021年1月12日 編集・翻訳(八度妖)

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