林芳正外相は親中派なのか?ー台湾メディアから

台湾の最大手新聞社自由時報(民進党寄りの立場)に面白い記事がありましたので、和訳してみました。


現在日本の外務大臣を務める林芳正氏(2021年11月就任)は「親中派」であるとして批判されているが、一方で中国側は過去に「日中友好議員連盟」の会長を務めたことがある林芳正外相に期待している感がある(既に外相就任時に当該連盟会長を辞めている)。安倍晋三元首相が2021年12月1日に「台湾有事は日本有事だ。日米同盟有事でもある」と述べたが、この発言は、安倍氏は与党自民党内での右派の代表人物であり、現在の岸田文雄政権に対して牽制をする意図があると考えられる。また安倍氏はこれにより、岸田首相に対し林芳正氏を外相に任命した事に不満があることも伝えている。

安倍氏はなぜ林芳正氏を外相に起用したことを批判しているのか?安倍氏が親台派であり、中国に対して厳しく、且つ林芳正外相が親中派だから。果たしてそうなのだろうか?日本では、このような分析をして解説する時事評論家はたいていが「右派」と呼ばれるケースが多い。また日本以外においてもこのような見解を示すケースが見られる。

日本政治の謎を解くキーワード:「選挙のための政治」

しかしながら、日本政治に精通している専門家は、必ずしも林芳正氏を「親中派」と解釈する必要はないと言っている。その原因は、岸田首相と林芳正外相は外交上の基本的立場として、日米同盟を最重視しており、また日中関係の安定を重視しているからである。逆を言えば、中国国家主席の習近平氏を国賓として訪日させようとしていた安倍政権末期の方が親中ではなかろうか。率直に、安倍氏と林芳正氏両名の関係が緊張している主な原因は縁故であり、過去彼ら衆議院及び参議院の選挙区が重複していたことがあるからだ。

安倍氏の父 安倍晋太郎氏(元衆議院議員、外相及び内閣官房長官等を歴任)と林芳正氏の父林義郎氏(衆議院議員及び大蔵大臣等を歴任)の時代から、山口県の同じ選挙区に於いて競争関係にあった。安倍氏は同県の衆議院小選挙区で10連覇、林氏は参議院選挙区の一人区において5連覇しており、山口県選挙区は、共存の道を歩んでいた。しかし2021年10月に行われた衆議院総選挙では、参議院議員であった林芳正氏が初めて衆議院議員の「山口3区」で立候補し、また得票率76.9%という多くの票を得て当選した。ちなみに山口3区は安倍氏の衆議院議員「山口4区」のお隣である。

日本は大都市以外の地方の人口は減少しており、有権者全体の投票権の平等性を保持するために、不定期に選挙区の調整を行なっている。規定では今後人口増加が見込まれる都市部においては衆議院議席を10席増やし、人口減少が見込まれる都市部以外の選挙区では10席減らすことになっている。山口県はその影響で1席減らさなければならない。それ故に、安倍氏と林氏両名のどちらかは自身の小選挙区を諦め、衆議院比例代表制の選挙区で立候補する可能性が高くなっている。

安倍氏には子供がおらず、また後継者もいない。彼の国際的知名度は非常に高いが、現在の状況を鑑みると、将来的には衆議院選挙では林芳正氏に選挙区を奪われるかもしれない。

政治家に「レッテル」を用いて判断するべきではない

安倍氏が2021年衆議院総選挙後に、自民党党内の最大派閥「清和政策研究会」の会長になったが、これは必ずしも安倍氏の影響力が絶対で安定していることを意味するものではない。彼は21年の衆議院議員の得票率は17年10月の選挙よりも2万票以上も少なかった。また、安倍派内部でも福田康夫元首相の流れを汲む主流派のメンバー内から不満の声が挙がっている。

その一方、林芳正外相は豊富な経験を持つ実力のある人物であり、「ポスト岸田争い」においては首相候補の1人として挙げられる。彼は東京大学法学部を卒業後、三井グループ傘下の「三井物産」で働いたことがあり、また米国ハーバード大学ケネディスクール(John F. Kennedy School of Government)に入学したなど、英語がとても流暢である。また彼は米国連邦上院と下院の議員のスタッフを務め、日本では防衛大臣、経済財政担当大臣、農林水産大臣、文部科学大臣を歴任した。彼は防衛大臣であった頃、自衛隊と日米同盟などの重要性を十分認識しており、防衛省内部からの彼に対する評価は非常に高かった。

日中友好議員連盟は中国当局が指定する「日中友好7団体」の一つである。これは中国共産党統一戦線工作部が狙いを定めている対象である。しかし、安倍氏と盟友とも言われ、安倍氏が首相在任中に当該連盟の会長でもあり、自民党副総裁も歴任した高村正彦氏は、中国が反対していた日本の「平和安全法制」(2015年国会で「安保関連法」を通す)と改憲を推進している人物である。また安倍氏は常に高村氏を通じて、中国に日中関係の改善となる情報を伝えていた。つまり、日中友好議員連盟の会長に就任したから「親中派である」と解読する事は完全に成り立たないのである。その上、高村氏本人も山口県から選出された衆議院議員である。

日本と中国の外交関係においては、日本の与党は本来中国へ国会の外交官的立場で人間を派遣する必要がある。中国の脅威が日に日に増す状況に面している現在、一方では日米同盟の強化、安全保障のパートナーを多元化することを通して日本経済と安全保障に対応しなければならず、また一方では、日中関係の安定を保持しつつ、中国の脅威が日本経済に対して影響を及ぼすことを最低限に抑えながら長期的な関係を保つことが日本の対中政策の基本であろう。

「レッテル貼り」の背後には、多くの政治的な動機が存在している。いわゆる「親〇派」や「反〇派」というレッテルを用いて日本の政治家を判断する事は日本の動向を見誤る可能性が極めて高い。故に、知識ある読者の皆様には十分留意することを望む。

情報ソース 2022年1月23日付自由時報
https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/1497456

2022年1月24日 編集・翻訳(八度妖)

Web管理者感想

この論説は東京大学東洋文化研究所 松田康博教授が述べたものとなります。

言いたい事としては、政治という世界は白黒はっきりできる世界ではない為、松田教授の最後の言葉にあるように、安易に「誰々は〇〇派」だというようなステレオタイプな見方をするのは良くないということですね。

この言葉、私も反省しなければならないと思いました。台湾の政治を解説する際に、国民党は悪、民進党は正義、みたいに感じ取れるような言い回しをしている時があるからです。

政治の世界は、人と人とのドロドロの関係性の集大成みたいな感じで、そんな人間の欲望とも野望とも強い信念とも言えるようなものが交じり合った灰色のような世界を、白ですか?それとも黒ですか?と単純に判断できるものではないですからね。

私は日本国内の政治に関しては、特に現在の岸田内閣についても思う事は色々ありますが、自分が正しいという自信もないため、自分の意見を言わないようにしておりました。林芳正外相について、日中友好議員連盟の会長も務めていたという事実があったので、実のところケシカラン人事だと思っていましたが、この台湾メディアの記事を読んで、正確に言うと松田教授の意見を聞いて、あれ?アメリカとの関係も強そうだ、と感じ、もう少し多方面から岸田内閣というものを評価しなければならないなぁと思ったわけです。

もしかすると林芳正外相は根っからの親中で、どうしようもない売国奴なのかもしれませんし、いやいや意外、日中友好議連の会長を務めていたのは米中対立において第三者的立場で両国のパイプラインとしての役目を担っていたのか?なども考えなければならないと思うわけです。

また日本の政治がこうであるように、実は台湾の政治もグレーな部分ばかりで、例えば民進党は独立派として日本では知られておりますが、民進党の中にも親中的な議員がいたり、中国とパイプラインを持つ人物がいたりしますし、独立に関しても現状維持で良いと思っている人もいたり、国号だけ変えれば良いと思っている人や憲法までも変えなければならないと考える人もいたり、様々なのです。

ちなみに民進党は長年続いた戒厳令下で中国国民党に対抗する人たちを寄せ集めて出来た感満載の政党だったので、民進党の中にもいろんな派閥が存在するということ、まだドラフト版なのですが図で説明すると以下のような感じになります。知識豊富な視聴者様なら分かっていらっしゃると思いますが、政治は白黒はっきりしない世界であるということ、改めて伝えさせていただき本日は終わりとさせていただきます。

https://twitter.com/asianews_ch/status/1444883895342694400
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