外省人・本省人で台湾情勢を語るのはふさわしくない

今日は、台湾情勢についての基礎知識の情報更新を促すブログとなります。と言いますのも、YouTubeやTwitterの声を見ると、未だに実情に適していない情報をベースに台湾情勢を語る人が多いと感じたからです。

さっそく結論なのですが、ずばり!

外省人、本省人というステレオタイプな知識で台湾情勢を語ることは、時代に合っていない!

外省人・本省人という言い方は
もう止めましょう

ということでございます。

ちなみに内省人という方もいらっしゃいますが、台湾では内省人という言い方は聞いたことがありません(八度妖の主観です)

日本語には内省(ないせい) 、「自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みること」という意味もあるので、せめて内省人という言い方はあまり相応しくないと思ってください。



さて、ではなぜ外省人・本省人がふさわしくないなのかということを解説いたします。

まず外省人、本省人のイメージというと、本省人は、戦前から台湾に住んでいた元日本人で、親日的、そして外省人は大東亜戦争後、チャイナから渡ってきた200万人と言われる人たちで、政府機関の幹部ポジションに就いたり、タダ同然で台湾人から接収した不動産などの財産を使った民間企業経営者、つまりは財閥といわれる人たちで、台湾社会を牛耳っているというものかと思いますが、戦後間もないころから1980年代の戒厳令が解かれるまではそういうイメージで台湾を捉える事は総論としては間違えではないと思います。

しかし、1988年に当時総統だった蒋経国氏が亡くなり、副総統だった李登輝先生が総統になってから、民主化へ向けてあらゆる改革を行ない、1996年に初めて民主政治が始まって今に至っている事は台湾好きの皆様であればご存じの事かと思います。現在の自由民主の国台湾が成り立つ前には台湾人の大変な苦労があったことは想像に難くないと思いますし、その過程で大きな変化があったこともご理解いただけると思います。

例えば1997年の台湾省の実質廃止。現在、台湾は中華民国と言う国号の下で国家運営を行なっております。

台湾独立派の私からすると中華民国と言う国号すら、はやく変わって欲しいと思うのですが、台湾は法治国家で総統の鶴の一声で変わるなんてことは出来ませんので、一歩ずつ着実に台湾国または台湾共和国の樹立を願っております。

さて、話は逸れてしまいましたが、台湾省の廃止、つまりは、中華民国という国は台湾にのみ存在しているという意味の表れで、省がないということは、もはや外省人、本省人という呼び方も整合性が取れなくなってしまいます。

そして何より先日4月7日、蔡英文総統もSNS上で発言していましたが、台湾の自由民主を主張した活動家と知られる鄭南榕さんですが、反乱罪に抵触するとして警察が、彼を逮捕しようと彼が運営する雑誌社に突入しようとした際に焼身自殺をしたのが1989年4月7日。彼の命日に多くの台湾著名人がSNS上で哀悼の意を表しておりました。

鄭南榕 氏 (1947~1989)

さて、鄭南榕さんですが、自由民主の為に身を捧げた事ばかりにクローズアップされがちですが、実は台湾独立をも主張しております。そして、彼は父親が所謂外省人、母親が所謂本省人という家庭に生まれました。この場合、外省人と区分するべきなのでしょうか?それとも本省人と区分するべきなのでしょうか?台湾も父系社会と言われておりますので、外省人という区分が適切なのかもしれませんが、彼の思想を見ると、反攻大陸!中華統一!祖国は中国大陸、という考えは無く、自由民主と台湾独立を主張しているという点では、ある意味本当の台湾人とも言えるわけなのであります。

勘の良い方はお気づきかと思いますが、1989年、戦後から40数年経って、世代が一つ入れ替わっている時代で既に外省人・本省人という区別があいまいになってきているという点。そしてそれからさらに30数年経った現在、また世代が入れ替わっているので、更に外省人・本省人という区分が無意味になっていることはご想像いただけると思います。


極端な例で申し訳ないのですが、米国は移民国家です。マイク・ポンペオさんは曾祖父がイタリアから移民してきたと言われておりますが、だからと言ってポンペオさんを「親中のイタリア系だから彼も親中のはずだ!」と言ったら、「何言ってんだコイツ」と思いますよね。そんな状態が今台湾でも起こり始めているという事です。

次に、日本でもマスコミが取り上げて知名度のあるIT大臣のオードリー・タン氏。本当は大臣ではなく、無任所大臣(むにんしょだいじん)的なポストなんですけど、便宜上大臣と言わせていただきますね。

オードリー・タン氏は今回の武漢肺炎の件で脚光を浴びましたが、昔から台湾の為に色々と貢献してきた人物でありますが、彼女のおじいさんが所謂外省人、つまりオードリー氏は外省人3世代目というふうに区分できるわけですが、果たしてそうでしょうか?

つまり、戦後から既に76年経過した現在、25歳で子供を産むとしても、既に4世代目に突入している家庭もあると思います。そのような状態でありながら、戒厳令が敷かれていた1980年代以前の概念を用いて、台湾の外省人は云々、本省人は云々というステレオタイプな考えで台湾を語るのは非常にナンセンスなことなのでありますし、執筆活動や講演で生計を立てている言論人と言われる人たちの中にも、こうした時代錯誤な考え方で台湾を語る人が意外に多いのが最近気になる点でございます。

冒頭にも申し上げましたが、台湾情勢を語る上で、今時外省人・本省人できっちり2等分して語るのは時代錯誤・ナンセンスだという事、覚えておいてください。(まだまだ所謂外省人幹部が権力を握ったりしていることもあるので、零か百かの判断をすることはしないでください。)


さて、ちなみに、台湾人は日常生活で外省人・本省人という言葉を使うか?というと結構使います。

どんな場面かというと

1.過去の話をする場合

あの人の父親は外省人で、あのマンションの一室は国から支給されたものなんだよね~、みたいな感じですね。これは過去の事象を坦々と語っているので、特に変な意味を持っていないことが多いです。

2.嫌いな相手の場合

これは2020年の台湾総統選でも顕著に出てきましたが、「国民党の韓国瑜は外省人だから」という相手をけなす場面などですね。これはかなり政治的な意味合いを持っておりますから、よほどの事ではない限り公では使いませんね。

とこんなところでしょうか。ということで、日常生活でも外省人・本省人を意識して社会的付き合いをしているということは現役世代ではほぼありません。結婚相手が外省人だから破談になった、というのはごく稀なケース化と思います。

実際私の妻は父方も母方も所謂本省人の家系ですが、妻の大親友は所謂外省人であり、実際友人の父親は国から不動産を恩給として支給されるなど、かなり優遇された子供時代を過ごしておりましたが、それでも本音で語り合える友人でいられる状態です。

つまり何が言いたいか?というと、台湾社会は日本人が思うよりも非常に複雑で、ステレオタイプな考えで、外省人・本省人と分けられなくなってきたという事です。

そのいい例として、李登輝元総統の秘書だった早川友久さんが書いた日本人が捨てるべき「台湾への思い込み」という記事でも語られているのですが、今や外省人、本省人という分け方で、台湾情勢が語れない状況なのであります。概要欄にWebサイトのリンクを貼っておきますので、詳しく知りたい方は、そちらをお読みください。簡単に概要を説明すると、2018年の台湾南部最大都市の高雄市で行われた市長選挙で、今まで民進党の牙城であったのですが、国民党出身の韓国瑜氏が泡沫候補までとも言われていたものの、最終的には市長になってしまいました。つまりは本省人の牙城の高雄でも国民党が勝利してしまうくらい、政局は変化している、台湾国民は候補者の公約を見極めて投票しているということです。よろしいでしょうか?多くの日本人が尊敬する李登輝元総統。その秘書を務めたことがある早川さんが「日本人が捨てるべき思い込み」として外省人・本省人という分け方をあげていること、ご理解いただければと存じます。

日本人が捨てるべき「台湾への思い込み」は下をクリック
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/14466

ちなみに民進党支持の私から高雄の状況を擁護するとすれば、2018年の高雄市長選挙ではどちらも支持を決めかねている所謂無党派層に対して、国民党のみならず中国共産党も人的、金銭的、そしてメディアも使って大々的に民進党が負けるようなキャンペーンを繰り広げられた結果とも言えるわけです。簡単に言ってしまえば、大きな公約を掲げて、それと同時に民進党たたきを必死にやったということです。まぁ、その後、中共が牙を剥き始めたので台湾人が中共の脅威に気が付き2020年の総統選では蔡英文総統が圧勝と言う結果にもつながり、高雄市長だった韓国瑜氏はリコールされて失職したわけですが。

いずれにしても、未だに外省人・本省人という区分けで台湾を語る言論人はあまり信用できないという私の主張なのですが、そんなこと言われると複雑になってしまうので、もっと単純に理解したいという声もあると思います。その場合は、その人物が国民党支持なのか民進党支持なのか、という政党でみるのがよろしいかと思います。もちろん、この区分の仕方もざっくりとしたものだという点、ご理解いただければと思います。

ちなみにTSMCがネット社会ではあれこれ言われておりますが、創業者のモリス・チャン氏は現在与党の民進党と親密な関係を築いており、2020年APEC特使に任命されておりますし、過去2006年、2018年、2019年にも特使に任命されており、政府と緊密な関係を持っている事が分かると、台湾最大の新聞社自由時報も記事にしております。半導体が軍事物資にもなっている現代社会で、なぜ国民党政権下の2008年から2016年までの8年間、TSMCが特使に選ばれなかったのか?そして何より、非上場企業ではなく、上場企業であるのですから、会社幹部がどのような人なのか?主要株主がどういう構成なのか?という面も含めて、TSMCという会社を評価していく必要があると思うこの頃でございます。

2021年4月13日 編集(八度 妖)

※この記事で伝えたい事はステレオタイプな考えで台湾を見ないでください、ということです。動画内では外省人・本省人が区別がなくなっているように感じてしまうかもしれませんが、外省人が根っから嫌いな本省人も未だにいますし、本省人を見下すような外省人も未だにいます。

零か百かで語るのではなく、「○○な傾向がある」というように捉えていただけると幸いです。

  断定的な表現や強めの表現を使っているのは、「○○の傾向がある」という表現では今まで日本人が持っている固定概念を打ち破れないと思ったからです。この表現を不快に感じられましたら、大変申し訳なく存じます。

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“外省人・本省人で台湾情勢を語るのはふさわしくない” への2件の返信

  1. 確かに明確に区分できなくなっている外省人と内省人をベースに台湾を理解しようとすることはエラーを生む場合もあるかもしれませんが、そもそも一般的に日本人の台湾に対する「台湾は全て親日的」といった明らかな認識不足のステレオタイプよりはまだマシなのではないでしょうか?

    1. どの層をターゲットにしているかにもよると思います。
      私のブログや動画をご覧になる層は「台湾は全て親日的」「韓国は全て反日」というステレオタイプな考えを持っていない人であると考え、その方たちを対象としております。

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