TSMC、ファーウェイの新規受注停止から見る米中関係

まずは台湾で報道された記事を和訳・編集しましたのでご覧ください。

  インドメディアの11日の報道によると、数日前、米国アップルの幹部とインド高官の間で、アップル社の生産能力の20%を中国からインドへと移す計画を交渉中だと伝えた。インド高官の話では、アップル社は将来5年間、インドで400億ドル(約4兆円)のスマートフォンの生産を行なうと同時に、生産を委託するEMS最大手のフォックスコンとウィストロンを通して輸出する計画だと話し、もし計画が実行されれば、アップル社はインドで最大の輸出業者になると伝えた。

  報道によると、アップル社はインド政府が最近公表した企業招致計画に興味を持っており、武漢肺炎の流行により国を跨ぐグローバル企業は製品製造においては中国から移転することを考慮していると伝えた。インド政府が3月に発表した将来5年間にわたる生産奨励計画(PLI)の草案では、外資企業による設備投資を加速させ、インド電子部品、半導体、携帯電話部品とパッケージ試験などの生産を向上させ、インドが科学技術におけるサプライチェーンを構築することを目的としている。


  ウィストロンは2017年から、インド・バンガロール工場で廉価版アップル社のiPhone SEを生産しており、第二工場ではiPhone 7とiPhone 8を製造しており、一部の製品はインド市場以外へ輸出している。ウィストロンのライバルのフォックスコンは昨年(2019年)インドでiPhone XRの生産を開始し、現地ではプリント基板の組み立ても行なっている。しかし、インドではスマートフォン関連の部品の一部、例えばディスプレイとカメラ関連の部品は中国からの輸入に頼っている状態である。また2018年韓国サムスンはインド・ノイダに世界最大規模のスマートフォン工場を完成させている。


  アップル社は現在インドでの携帯電話販売額は15億ドル(約1500億円)で、そのうち現地で生産されているのは5億ドル(約500億円)にも達しておりらず、アップル社のインドでの市場シェアは2~3%とも言われている。アップル社は中国に一番投資している企業であり、2018年~19年の中国で生産された2200億ドル(約22兆円)の製品のうち、1850億ドル(18.5兆円)は輸出する製品である。中国の450万人がアップル社のサプライチェーン関連の仕事をしているとも言われている。

はい、以上が記事の和訳でした。

アップル社は中国政府の要求で中国地区ユーザ限定とは言うものの、iCloud用のデータセンターを中国に建設しており、且つ今回のニュースは恐らく製品を安定的に供給できるということを目的としているため、生産拠点を完全に中国から撤退するという事はないと思います。しかし現在も大部分を中国で生産しているという大きなリスクがあの流行り病で露呈しましたので、アップル社に限らず、中国に生産拠点を多く置いているグローバル企業は、中国依存からリスク分散という面での撤退は始まるのは、経済素人の私からみても必然的な流れかと思います。


さて、前回、世界最大のIC専業ファウンドリー TSMC(台積電)が米国に工場を建てることを決め、いよいよ米中貿易戦争にとどまらず、経済的な世界大戦になるのではないか?という動画を出しました。しかし、5月18日にブルームバーグと日経新聞でなんとTSMCについてのニュースを出しておりました。

TSMCがファーウェイから新規受注停止、米制裁強化受け-報道

  TSMCが、ファーウェイからの新規受注を止めたと日経新聞電子版が18日報じた。米政権が15日にファーウェイに対する事実上の禁輸措置を強化したためとした。既に受注済みの分は9月中旬までは通常通り出荷できるが、それ以外は輸出に際し米の許可が必要になるという。

ということで、TSMCの米国アリゾナに工場設立は喜ばしいニュースではありますが、TSMCはどうやら自ら望んでアメリカに最先端の5ナノ工場を建設したようではない、ということがちらっと垣間見ることができますね。今回はあくまでも米国の禁輸措置に倣った形であると表明しているからです。

  また、最先端工場が米国に建設されるという事ですが、5ナノのメインはやはり台湾国内で生産するようで、米国での生産量は5ナノのうち10%にも満たないという事です。というのもやはり、TSMC単独で、製品を作れるわけではありません。関連部品や製造ラインに関係する設備の会社など、関連した企業を米国で探すか、台湾の関連企業に一緒に米国に進出してもらうかをしてもらわなければなりません。

  そして、人材。TSMCの残業時間は鴻海並みに多いと言われ1日15、6時間勤務というのもざらで、且つ、TSMCに入るには台湾大学、清華大学、交通大学と言われる台湾でトップクラスの大学または大学院を卒業していることが最低条件であり、大学1年、2年生の時から青田刈りが始まっております。しかもどの教授や実験室の下で研究していたのか?などが大切で、TSMCの事業に関連した実験室や教授の下で授業を受けている学生を指定するというやり方を取っており、卒業と同時にほぼ即戦力という学生が求められているため、、ただ単に入学しただけではTSMCへ入社する機会がすると思ってはいけないという事です。そして、そんな人材をアメリカに何百人と連れて行くわけには行きませんし、台湾で生産することで人件費も抑えられるため、TSMCに人件費と言う大きなコストが発生するのは確実ですね。

  また、TSMCのコストに対する考え方は徹底しており、製造設備が故障して目標の生産量に達しなかった場合に、設備の修理の理由はもちろん、修理にかかった時間までも管理の中に盛り込まれているくらい厳しい物であります。例えていえば、F1レースのタイヤ交換で5秒で完了するのか4.9秒で完了するのかの違いと言えば良いのでしょうか。それだけの僅かな減産ですら、製造工程の改善を徹底的に行なうような体制のようです。恐らく生産効率は世界でもトップレベルではないか?とも言われているくらいです。

  そのいい例としては、2016年の台南で大きな地震があったのを覚えていますでしょうか。その自身で大きな被害を受けたTSMCの工場ですが、地震発生後台中、新竹などにいるエンジニアが台湾に向かい、復旧作業に当たったり、製造設備は日本製を使ったりしておりますので、復旧作業で製造設備に異常があったら日本の技術者をすぐに呼べるようにスタンバイの依頼をかけていたりして、たった72時間でフル稼働に持って行ける状態にしたという事例がありました。もし、アリゾナで、地震が無いにしても、それ以外の自然災害が発生した場合は、移動だけで十数時間以上もかかるわけですから、TSMCとしてはやはりあまり米国に拠点を置きたくないというのが本音のようですね。

  ただ、逆に言えば、TSMCにとってみれば、建設費用もそうですし、生産コストも非常に高い何ら魅力ない米国に生産拠点を設けるという話は、よほどアメリカからの圧力が強かったと予想されます。そもそも台湾は米中と言う大国に挟まれ、米中どちらにも良い顔をしなくてはならない状態だったのですが、米中がこうなっている状態ですので、今回TSMCは中国との関係を断ち切ろうと決断したのかは分かりませんが、いずれにしても、台湾は完全に米国側陣営にどっぷり足を突っ込んでしまったという事ですね。コストだけ見ると、TSMCは非常に不利かと思われますが、考え方によっては日本の在日米軍に対する「思いやり予算」のように、工場をアメリカに建設することにより、軍事的な面でアメリカ軍の後ろ盾が得られるということになるので、生産にかかるコストは、用心棒代だと思えば良いという考え方もできると台湾の専門家は言っておりました。確かに現在台湾では徴兵制度は実質廃止となっており、志願制でしか兵を集められない状態で、国防部は非常に苦労しているようです。ですので、今回のTSMCの決断の裏には台湾政府も絡んでいるのでは?と推測しておりますが、あくまでも私個人と一部の専門家の考えであります。


 それにしても、現在南シナ海に米海軍、人民解放軍が集結しており、本当にきな臭い状態になっておりますが、こちらについては日本のメディアは全然報道しておりませんよね。台湾ではアジア版キューバ危機になるかもしれない、とも言われてるくらい緊張が高まりつつおり、本来ならば日本の国防にも関わってくるものなので、日本人もこの南シナ海の動向には注目しなければならないのですが、お花畑の人が多いんでしょうね。しかし、動画のコメントを拝見する限り、私の動画の視聴者さんは、ちゃんとその辺の事がわかってらっしゃるのが幸いだと思います。そこで台湾で流されている南シナ海の軍事関連のニュースも動画配信したいのですが、軍事的な知識も少なく、なかなか動画作成ができないこと、本当に心苦しく思います。その点ブログでは更新しているので、Twitterフォローしていただけると、ブログの更新を通知しておりますので、ご検討いただければと存じます。

YouTubeでも動画配信しております

2020年5月21日 編集・翻訳(八度 妖)

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