台湾振興三倍券を巡る外国人への対応について

実際に使われるであろう振興三倍券のサンプル

  武漢肺炎による経済的危機を救うために台湾行政院が打ち出した振興三倍券。これは何かというと、国民が1000元(3500円)払えば、その三倍の3000元(約1万円ちょい)の振興券がもらえるという政策。日本は現金を配ったので、国内需要を回すという意味では、海外旅行に使う、というように抜け穴が発生するが、この振興券は国内でしか使用できないので、私は高く評価したい。(一時期日本でも肉クーポンだの海鮮クーポンだのにするという案もあったようですが、噂であってほしいレベル)

  だが、ここで噛みついたのが外国人。日本の場合は確か在留資格を有していれば、10万円が支給されると記憶しているが、台湾はそうではなかった。
今回振興券を購入できるのは

台湾人と「台湾人の配偶者の外国人」のみ

この発表にまず声を上げたのが台湾にある欧州商工会理事長。

  このように配偶者以外の外国人もこの振興三倍券を購入できる権利を与えるべきだと訴えている。まぁ、よくばりな外国人だなぁと思っていたら、ある台湾在住日本人、しかも「永久居留証」を取得している人も同じようなことを訴えていた。ただ、訴え方が

「わたしゃ、お金のために不満を述べてるのではなくて、一緒に経済を回そう、祭りじゃ!という雰囲気に参加できない、ハブられたような気がした」

というちょっと遠回しな言い方であった。更には「台湾は観光客には門戸を大きく開いているのに、居留証を取得した観光客でもない、自国民でもない外国人には冷たすぎる」と仰っている。

  いやいや、今回の経済対策は国内での消費を刺激するものであり、また基本的にはそういう福利というのは自国民のためにある。例え永久居留証を保持しようが、高い税金を払っていようが、自国民が優先されるのは当たり前の事である。それに振興三倍券が無くたって、武漢肺炎による不景気を台湾人と一緒に打開する方法はあるはず。それをやって盛り上がればいいのではないだろうか?


  しかもよくよく台湾での就労ビザ取得条件を調べたところ、台湾で外国人就労ビザを発行するには基本的に月給が47,971元(17万円)を下回ってはいけないと規定されている※1。また台湾人の平均収入は平均で5万元(約17.5万円)なのだが、これは鴻海創始者の郭台銘氏やTSMC会長のモリス・チャン氏を含む全体の平均値であるので、一般市民に当てはめるのはふさわしくない。そこで用いられるのが中央値というもので、山のようになっているグラフの一番数字の大きい部分のことである。その中央値は月収入29,000元(約10万円)である。また最低賃金は19,047元(約6.6万円)であり、外国人労働者は台湾人の最低賃金の少なくても2.5倍は最低でも貰っていることにあり、これを考えると台湾人の配偶者でない外国人が対象にならないのは納得であろう。

そんな事情も知らずに、対象から外されて、「なんだかやるせない思いだ」なんて言うのは、ちょいと野暮ではなかろうか。私は台湾人の配偶者ということで、今回の振興三倍券の対象になるわけだが、仮に配偶者も対象外となっても不満を言う気は全くない。それが嫌なら永久居留証ではなく帰化申請をしたらいかがだろうか?台湾人は勿論、配偶者だって(基本的には)一生台湾と付き合っていかなければならないわけだし、仕事で47,971元が保証される仕事に就けるわけでもない(意味としては3万元や2.5万元の仕事をせざるを得ない)のだから、振興三倍券が購入できるわけだ。
ちなみに台湾での永久居留証の申請にも収入に関する項目もある。1年間に554,400元(約190万円)、つまりは月に4.6万元(約16万円)以上の収入がなければ、永久居留証の申請が出来ない訳である※2。それだけの収入(台湾人の最低賃金の2.5倍)がありながら、「振興三倍券を台湾人の配偶者以外の外国人に支給しない台湾政府の対応は酷い!」なんておっしゃっている。
あまりにもお金に執着してみっともなく映るが、まぁ、日本人はこのへん大人しいので、声を上げるという点では評価するべきなのかもしれない。

2020年7月6日 編集 (八度 妖)

※1 労働部労働力発展署
※2 内政部移民署Webサイト

先週の台湾国内ニュース(20/06/28~07/04)

●7/1 行政院振興三倍券を7月1日から予約販売、当日179万人が紙による件またはデジタルチケットを予約

   武漢肺炎の封じ込めに一定の成果を上げた台湾では、いかにしてコロナショックによる影響から経済を立て直すかが重大な課題となっております。日本では一人10万円が支給されましたが、台湾はどういう対応をするのかが注目されておりました。振興券の発行することで、広く国民に消費を促す目的で行政院(=内閣)は、振興券を「振興三倍券」と名付けました。国民1人当たり1,000台湾元(約3,500日本円)を自己負担することで、その3倍となる3,000台湾元(約1万円)の消費ができるようになります。これについては、少ないだの、面倒だだの色々と批判が出ましたが、それはどの国でも文句を言う人はいるので、どのくらい批判の声があるのか?という事が大事かと思います。

恐  らく気になる所としては、台湾に住んでいる外国人にも支給されるかどうか?という点かと思います。こちらは、台湾人と結婚している配偶者のみが対象となり、就労ビザや就学ビザで台湾に滞在している外国人は対象外となります。日本の場合ってどうなんでしたっけ?確か在留資格を持っていれば受給資格があったような気がしました。また日本と違い、基本的には現金の支給ではないので使える場所が実店舗や夜市などとなり、国内で消費するように考えられております。

この振興券による経済効果は1,000億台湾元(約3500億円)と言われております。


●7/1 外交部7月2日にアフリカソマリランドと「台湾代表処」及び「ソマリランド代表処」の名称で公式代表機関を設置することで合意

  呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は1日、記者会見で、台湾はアフリカ北東部ソマリランドと相互に公式代表機関を設置すると発表した。呉部長によれば、今年2月下旬、双方の外相が2カ国間議定書に調印し、相互に代表処を設置することに同意したという。呉部長は双方の互恵関係向上に期待を寄せた。


  はい、こちらについては、日本でも一部報道されておりましたが、中共の外交圧力により昨年はソロモン諸島、キリバス中華民国と国交を断絶しておりました。今回のニュースは、新たに国交樹立というとちょっと正確さに書けてしまうのですが、大まかな意味では国交樹立というニュースと言っても良いのかもしれません。
残念ながらソマリランドは国際的に国家承認されていない国でありますが、注目すべき点が、現在中華民国台湾政府が国交を持っているのはあくまでも1911年に建国された中華民国という名前で国交を結んでいたのが、今に至るまで残っているというような形ですが、ソマリランドと計画している公的機関の名称が「台湾代表処」であって中華民国の名前がないということは、なんだか台湾を応援する人にとっては一歩前進したような感じですね。
ただ、台湾側としても現在は中華民国憲法下で国家運営を行なっている、行わざるを得ない状態ですので、厳密に言うと細かい書類には結局中華民国という名前が入ってしまうと思うのですが、いずれにしてもその枠組みの中で如何に台湾と言う色を出すか、という点では、今回のニュースは朗報だと私は考えます。

https://www.facebook.com/mofa.gov.tw/posts/856013564923287

  ちなみにソマリランドというと、昔は当該海域は海賊だらけで非常に危険だったのですが、すしざんまいの社長が乗り込んで海賊たちに漁でお金をかせぐことを教えて海賊がいなくなった、というような話がネットでは出回っておりますが、これはちょっと誇張しすぎているという点、気を付けてください。実際はそういう丸腰だった漁船に武装警護をつけるようになったことと、自衛隊を含む世界の海軍が警備に当たったからであります。話題作りのネタとしては面白ものだとは思いますが、けっして一人、一企業だけで撲滅した訳ではないのであります。

●7/2 立法院7月2日に「農田水利法」制定、今後農田水利会の資産と負債は政府が継承

  はい、これは何かというと、農地用水を管理している農田水利会という組織が、行政機関として農業部(農水省に相当)農田水利署に編入されることが決まった訳であります。行政機関に編入されることで、公権力の行使が可能になり、現在問題となっている水質汚染についての対策を行なえるということになります。ただ、公的機関になるということで、中立性・透明性についての疑問が野党の国民党から上がっており、そして、与党民進党内からも疑問の声があがっております。こういう疑問を呈して、きちんと対策を打ち出せるのであれば、こうした疑問を挙げることは良いことだと思います。

2020年7月6日 編集・翻訳(八度 妖)

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