浙江江蘇閥って何?そんなの聞いたことが無い

  どこかのITビジネスアナリストF女史がよく「青幇(チンパン)」という言葉を使って、台湾IT業界も中国と同じように赤く染まっていたり、裏で糸を引いていると本を出版したり、SNSで情報を拡散しておりますが、最近になって、台湾を愛する人たちによって、「青幇(チンパン)」は既に影響力がなくなり、風前の灯火だという事実が知れ渡ってきた影響なのか、F女史の発言から「青幇(チンパン)」という言葉が少なくなってきました。その替わりに「浙江江蘇閥」という言葉を使い始めたことに気づきました。浙江江蘇閥についての知識はそれほどないのですが、さらっと調べてみた限り、浙江省や江蘇省出身の財界人が集まった浙江閥(浙江財閥)が存在したのは確かであり、中国がまだ蒋介石率いる中華民国だった頃に蒋介石は浙江閥(浙江財閥)に苦しめられていたのは歴史にも残っております。

神戸又新日報 1930.5.2 (昭和5)

習近平氏は2002年に浙江省の党委書記に就任していたため、浙江省の党幹部とのつながりが強いと言われています。

  一方江蘇閥とは何か?というと調べた限り、明確な定義が無いようです。江蘇省は上海の北部に位置する省であり、恐らく上海幇(シャンハイバン)と同じであると推測されます。そして江蘇閥(上海幇)の実力者と言えば、江沢民氏、曽慶紅氏などが挙げられます。
  現在中共の最高指導者と言えば習近平氏。つまりは浙江閥も習氏寄りのグループであると考えられますが、一方江蘇閥(上海幇)は権力闘争の相手であります。つまり「浙江江蘇閥」という言葉は水と油が一緒になったような言葉であるという事がお分かりいただけたでしょうか。
  ちなみに中国語の情報も調べたのですが、浙江閥と江蘇閥が仲良く組んでいるというような資料を未だに見つけられないでいるのは、私の探し方がおかしいからなのかもしれません。

結論

  F女史は以前は青幇を使って根拠もなく台湾や台湾人を批判していたのですがが、冒頭にも述べたように青幇が何ら影響を持たない組織であることがバレ始めたので、新たに「浙江江蘇閥」という言葉を作り上げたものと考えます。冒頭にもあるように「浙江財閥」という」単語は存在しておりますが、それは中華民国政府が大陸を統治していた頃の話。現在は既に国民政府の敵対勢力である中国共産党体制が敷かれている大陸においての浙江・江蘇というと

浙江=習近平派、江蘇=江沢民派

となるため、この二つの派閥が仲良くくっついて、更には台湾ともくっついて世の中を回していると思いますか?私はそんなことはないと考えています。

また仮にF女史の言う浙江江蘇閥が国共内戦で敗れて、国民政府軍と一緒に台湾へ亡命してきた外省人が織りなす組織であったとしても、(蒋介石時代の)中華民国の浙江財閥の影響力が大きかった頃から、既に時間も時局も大きく変化しており、また一番の後ろ盾であった蒋介石が亡くなって影響力を失っているため、台湾メディアでは浙江江蘇閥(または浙江閥)の話を取り上げることはない。そして何よりもF女史が言うTSMC(台湾積体電路製造)が浙江江蘇閥であるというのは大きな間違えである。なぜなら、反共産主義であり、台湾を民主化に導いた李登輝元総統の言葉に

TSMCは、私が総統在任中、政府がバックアップをしてできた会社

とあるように、決して中共と一緒になるために設立された会社ではないという事です。いずれにしても

「浙江江蘇閥」という言葉に要注意!!

が必要である。


ちなみに「幇」という漢字にGANGSTAR(ギャングや闇組織)というイメージを持っている人も多いかもしれませんがが、そういう意味は無く「幇助」という意味から「お互いに助け合うグループ」という意味となっております。日本語で分かりやすく例えると「組」が付く組織で真っ先に思いつくのは何でしょうか?私は「山〇組」なんですが、如何でしょうか?しかし闇組織の組以外にも、大手ゼネコン会社にも「組」が付く会社がありますよね?つまり「〇〇幇」というのは「組」のようなもので、闇組織だった「幇」もありますが、そうでない「幇」も存在するのです。例えば「台南幇」が挙げられますが、こちらはセブンイレブン、スタバ、ヤマト運輸など手広く事業を展開する台湾の優良企業「統一企業」を中心として会社の集まりであります。
「台南幇」についてはまた次回ご説明したいと思います。

このように「幇」をGANGSTAR(闇組織)と説明している著名人もいる。「組」は闇組織という意味であると言っているのと同様である

台南幇って何? 如何に成り立ったのか?秘密結社に非ず

「台南幇」が秘密結社だと不思議なことを言うITビジネスアナリストがいるが、それは全くのデタラメだ。「台南幇」は確実に存在するものの、秘密結社ではなく、セブンイレブン、スターバックス、ミスタードーナツ、イエローハット、無印良品、ヤマト運輸など幅広く事業展開している台湾の優良企業「統一企業(台湾株式市場TPE: 1216)」をメインとした企業の集まりであり、公然となっている存在である。

以下は台湾経済部(経産省に相当)工業局に記載されていた文章を中心に私なりにまとめたものである。


一般人にとって「台南幇」とは抽象的な概念であるが、本当の台南幇のメンバーから言わせると、明確な脈絡の発展だけでなく、関連企業にも明確な立ち位置というものが存在する。呉修斉※1が父親について行き、侯雨利※2が経営する新復興布行で働き始める時から序曲が展開し、その後呉修斉と弟の呉尊賢が別の新和興を創業し、16歳の高清愿が新和興に児童労働しにやって来たことから台南幇の関係人脈につながっていく。
  侯雨利は早い頃から布生地屋を経営し、稼いでおり、当時台南市の布生地業界でトップであった。その後政府が紡織会社設立申請を開放したため、侯雨利の資金、呉三連の政治的人脈、呉修斉の経営能力を起訴として台南に紡織会社が設立した。これ以降、台南紡織は台南幇の旗艦事業となり、また台南幇を代表することになった。また台南紡織の収益、関連人物による手厚い共同投資、事業の拡大により、次第に台南幇の関連事業になっていった。

※1 現在台湾最大グループである「統一企業」の初代董事長
※2 台南紡織出資者の1人

  台南幇の主要な事業には、台南紡織、坤慶紡織、環球コンクリート、太子建設と統一企業が挙げられるが、20年前の急速な発展により、台南幇は急速に成形されていった。但し民国77年(1988年)から呉三連、侯雨利、侯永都が相次いで亡くなった後に、台南幇は初めての世代交代が進んでいき、呉修斉は同時に台南紡織、太子建設、統一企業の董事長(会長に相当)に就任し盟主の地位を確実のものとした。
  この後、台湾経済が急速に発展するにつれて、台南幇は伝統的な食品、紡績、建設会社から国際化、更なる多角化を展開していき、産業の多元化だけでなく、伝統産業から金融までカバーするようになった。

  「台南幇」という言葉が定着し始めたのは、民国72年(1983年)1月の《天下雑誌》にて特集となった「藍色(国民党)の中で育った巨人企業ーー台南幇」で報道された後に、工商的な性質を持ったメディアの記事で使われるようになった。「台南幇」には地域的な意味として「台南」と「北門」※3が隠されているが、「台南」や「北門」と関係する企業は台南幇のメンバーでない。例えば北門地区出身の東帝士企業集団の陳由豪総裁、府城出身の奇美実業集団の許文龍氏は台南幇には含まれない。

※3 日本統治時代に設置された台南州の北門地区出身のメンバーが台南幇の主要メンバーであったため、北門の意味も含まれている

経済部工業局の公式サイトにある資料は以下の通り(中国語のみ)
https://www.tipo.org.tw/TC/about_textile_3_in.aspx?id=10695&chk=c42ee2df-348d-4fa6-9a99-5fb9e50ffe2b&param=pn%3D97%26key%3D


Webサイト管理者コメント

  簡単に言ってしまえば、台湾の街中で見かけるセブン-イレブンやスターバックスと言った企業を経営しているのが統一企業で、台湾では誰もが知っている大企業である。その統一企業は台南幇のメンバーであるが、あるITビジネスアナリストのデタラメな主張により、台南幇も「青幇(チンパン)」」と同じように秘密結社の一つだと思われているようだ。しかし、「幇」は確かに秘密結社的なイメージを持っているものの、日本で「組」がヤ〇ザの組織と思ってしまうのと同様で、ゼネコンにも〇〇組という社名があるように、「〇〇幇」のすべてが暴力団や秘密結社という訳ではないこと、注意していただきたい。


  もし統一企業が秘密結社や暴力団であれば、話好きの台湾人の格好の話題のネタとなっているであろうが、そのようなニュース記事はもちろん、電子掲示板でも見かけることができない。ちなみに統一企業は台湾株式市場に上場している優良企業であり、IR情報等を見ればわかるとおり、闇社会との取引は行なっていないとされている。

台湾マフィア誕生会が血まみれ 大乱闘で5名入院

台湾最大マフィア組織の竹聯幇組員の誕生会にて刃物で切り付けられた現場に駆け付ける警察官

  台湾最大マフィアと言われる竹聯幇の陳は、今日(5/14) 未明友人と台北市松隆路のハロディKTV(カラオケ店)で誕生会を開いていたが、陳が途中トイレに行った際に他の部屋の客とぶつかり、口論の末、相手の持っていた刃物で首を切られ、双方の仲間が加わり大乱闘になり、そのうち5名が病院へ運ばれた。台北市警察信義分局は病院で負傷者を擁護しつつ、調査を開始した。

  情報筋の話では竹聯幇の陳と名乗る兄貴は35歳で、今日14日の誕生日を過ごすため、昨晩から友人主催の早めの誕生会を台北市信義区のハロディKTVで開いていた。

  今日深夜1時ころ、酒を飲んだ陳と周は、トイレに行くため部屋を離れた際に、廊下で他の部屋の客である楊と藍の2人とぶつかり、大口論となったのち、突然楊と藍の男二人が持っていた折り畳み式の刃物で竹聯幇のアニキ陳の首を切りつけ、現場は血まみれになった。陳の状況を見ていた友人は相手からは物を奪い、殴り合いのけんかとなった。

  カラオケ店は、すぐに警察に通報し、警察が駆け付けた後に、負傷者は忠孝病院、台北医学大学附属病院、国泰病院で治療を受けている。重傷の竹聯幇の陳は緊急手術を施し、現在病室で警察の擁護を受けながら観察中となっている。

血痕が残る店内

2020年5月14日 編集・翻訳(八度 妖)


このニュースとは関係ないのだが、日本の保守界で深田萌絵 氏と言うITビジネスアナリストが台湾には「青幇(チンパン)」と言われる政治・経済を裏で牛耳っている闇組織がいると大々的に書籍を出版したり、SNSで情報を発信しているが、果たしてその「青幇」は存在するのであろうか?

はい、答えは存在していますが、数十年前に弱体化しており今や「中華安清総会」というNGO組織になっており、深田氏の言うような

「裏で牛耳っている」

ということはありません。このように台湾事情を知らない人を相手に陰謀じみた情報をバラ撒く深田氏は、ジャーナリストとして失格だと思う。ただ、彼女はそんな言動を止める気はサラサラないようですので、深田氏の情報を参考にしている人は、Twitterなどでも深田氏のデマを暴いているツイートが多数あるので
一度冷静になって彼女の発する情報を客観的に分析してみては如何だろうか?

ちなみに台湾のマフィアと言えば、このニュースに出てきた「竹聯幇」以外にも、「四海幇」、「天道盟」が有名であるが、「青幇」こと「中華安清総会」はもはやこの中にも入らない存在である。