米議員が中国に1.6兆ドルの債務弁済を検討 専門家「一つの中国の原則では北京当局が債務を負う」

中華民国政府が発行した債券

  米国上院議員と下院議員が相次いで、中国に対して108年前に中華民国政府が発行した1.6兆ドル(約160兆円)の債券の返済を求める議案を提出した。金融の専門家と活動家は、もしアメリカが「一つの中国の原則」を従来通り執行するのであれば、北京当局は唯一の債務者であると分析している。

  アリゾナ州上院議員のマーサ・マクサリー(Martha McSally)氏、テネシー州上院議員のマーシャ・ブラックバーン(Marsha Blackburn)氏は13日共同で中国はアメリカに1.6兆ドルの「民国債務」と利息を返済することを求める議案を提出した。これら債務は中共が政権を樹立する以前に存在していたものであり、中華民国政府の債務であるが、中共は自身が唯一の合法政権であると主張しているため、中共は民国政府の債務を返済する必要がある。

  テネシー州下院議員のマーク・グリーン(Mark Green)氏は20日も類似の議案を提出した。この債券は金(ゴールド)を抵当にして発見され、最も初期のものは中華民国政府が1912年に発行したものである。国際法に基づけば、中華人民共和国は中華民国を承継した政府であり、中華民国政府の債務を返済する責任がある。

  《ボイス・オブ・アメリカ》の報道によると、バージニア大学の陳朝暉教授は、理論上、政府を運営する官僚や政府の政治意識形態或いは政府自身の形式に変化があったとしても、国家は債務を返済する義務があり、それは現在でも存在し続けていると考える。陳教授は、米国は現在一つの中国を承認しているため、北京当局のみが債務を返済する責任を負っていると考えている。

  米国の債券所有者である基金会(ABF,American Bondholders Foundation)の共同創設者であるジョナ・ビアンコ(Jonna Bianco)氏は、主たる債務の長期に渡る債務返済は珍しいものではないと指摘。歴史上においても何カ国かの政府が100年という期間の債券を発行したことがあり、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相が、中国に対して類似の債券の返済を求めたことがある。1987年サッチャー元首相は中国に債権債務の返還を要求し、さもなければイギリス資本市場に参入する機会を失うと、当時中国国家主席であった李先念氏に2350万ポンド(現在レートで約33億円)で和解するよう迫った。

  ビアンコ氏は、米国が「一つの中国」政策を承認している限り、北京は中華民国債務の唯一の継承者であることを強調した。

2020年8月28日 編集・翻訳(八度 妖)

WEBサイト管理者感想

  昨年9月にも同じようなニュースが出てきてビックリした記憶があるのですが、その時の債券は、清朝政府が1911年に湖広鉄路建設資金のために売り出した国債「湖広鉄道借款契約」(通称「湖広債券」)でしたが、今回記事を見ると金を抵当にして発行された債券で最も早いもので1912年とあるので、清朝が発行した湖広債券ではなさそうですが、昨年9月の記事でもジョナ・ビアンコ氏が出ていたし、金額も1兆ドル超えとあったので、湖広債券と金を抵当にした債券合わせて1.6兆ドルの債務を中共は引き継ぎ、返済する義務があるという形なのかもしれませんね。

  さて、そもそもこの「湖広債券」は何なのか?という話ですが、簡単に述べると、この債権は、四川省と湖北省を結ぶ、湖広鉄道の建設資金を集めるために、清朝政府が1911年に年利5%という利息で発行したもので、よく「四国借款団」という単語と共に歴史に出てくる単語です。

  1912年に辛亥革命によって、清朝は滅び中華民国政府が建国されます。中華民国は清朝の債務を引き継ぎ、1930年代半ばくらいまでは債務を返済していたようです。その後1940年の激動の時代に日中戦争や国共内戦などもあり、いつの間にか償還期限である1951年を前にして、中華人民共和国が建国し、この債券について一旦歴史から消えてしまいました。
しかし、1979年にアメリカと中共が国交を回復した3年後、約300人の債権者が中共に対して訴訟を起こしましたが、もちろん中共はこれを一切無視していたため、アラバマ州の裁判所で、この債券は有効であるとの判決が出ました。

  アメリカにおいて判決が出たものの国際法の原則として「主権国家およびその機関が,その行為あるいは財産をめぐる争訟について,外国の裁判所の管轄に服することを免除されること」と認められているため、つまりは民間人が外国政府に対して裁判を起こそうとしても「主権免除」という考えによってできないため、中国はこの判決に従う必要はないとしておりました。そのため、この後は実質棚上げ状態になっておりました。

  先程述べたように「主権免除」という国際法の原則があるため、基本的には貿易戦争の切り札にもならないような問題だったのでしょうが、デューク大学の教授が「債券は完全に合法である」と述べていることと、台湾の国際法の権威、丘宏達(きゅうこうたつ)博士は中共は清朝が発行した権利義務を引き継がなければならないと考えていることから、民間人の問題を今回の議案提出によって、民間人が抱えていた債務返済問題を米国政府が扱うことにより、外交カードとして使う狙いがあるのではないかと考えられます。

  ただ、ここで恐らく中国は、そんな債務は引き継ぐつもりはないと駄々をこねると思いますが、そもそも湖広債券で作られた鉄道は現在も中国大陸にあって武漢と広州を結ぶ路線として利用されている訳ですから、鉄道などの資産は引き継ぐが債務・借金は引き継がないよ、というのはちょっと虫が良すぎるような気がします。遺産相続でも資産を引き継ぐ際には、借金も自動的に引き継がれます。鉄道資産などは引き継ぐけど、国の借金は勘弁してね、なんてのは許されるべきではないと思っております。ただ、国家間の問題はパワーバランスで決まることもあり、中共が拒否したら資産は受け継ぐけど、債務は勘弁してね、というのがまかり通ってしまう場合ものあるので、ここはトランプ政権に頑張ってもらいたいものです。

  また心配となるなる部分として、仮に中国がこの債務を継承することを決めた場合に、「今俺は認めてないけど、自称中華民国政府は台湾にいるよね、債務を引き継いだんだから、中華民国のいる台湾はやっぱり俺のものだな」と主張する事です。これが心配ですね。つまり1.6兆ドル払うから、正式に台湾が中国の一部であることを認めろという交渉を米国とするのではないか?という点ですね。これについては「台湾地位未定論」を使って反論してもらいたいです。「台湾地位未定論」は台湾の主権は定まっておらず、中華民国はただ管轄権を行使しているだけに過ぎず、台湾を領有していない、という理論であります。多くの日本人が、日本は終戦に伴って台湾を中国へ返還したと誤解しているようですが、日本は台湾を中国へ返還したことはありませんし、現在の政府の見解としても、返還したという見解はありません。台湾地位未定論についての動画のURLを概要欄に貼っておきますので、お時間あるときにご覧いただければと存じます。
  私の希望としては、1.6兆ドルの債務を返済させて、且つ、台湾は地位未定論によって中共のものではない、とする形でありますが、過去の歴史を見るとアメリカは時々変な決断をすることがあるので、1.6兆ドル払えば、台湾領有を認めるよ、なんて言いださないかちょっと心配であります。

  現在、アメリカは、貿易面での制裁をかなり厳しく実行しており、更には金融面での制裁、これは以前動画で説明したドルを中国に使わせなくするやり方ですね。米軍を使った揺さぶり。そして今回の歴史的背景を含む巨額な債務問題。中国とアメリカがどう動いていくか益々目が離せなくなってきましたね。

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