2022年5月、米国カリフォルニア州で台湾系米国人の鄭達志(ジョン・チェン)医師がデビッド・チョウ(周文偉)容疑者によって射殺されてしまい、また、このほかに5名が負傷するという痛ましい事件が起きたのは記憶に新しいと思うが、容疑者が「台湾生まれの米国籍を有する人物」ということで、容疑者は外省人である、というような文言がメディアに登場するようになり、この「外省人」という言葉に対して、見直そうという声も上がっている。
なお、この事件に絡んでYouTubeでも解説しようとも思ったのだが、ちょっとショックが大きすぎるのと、YouTubeではこういう悲惨な事件に関してのコンテンツには厳しい規制が設けられることがあるので、YouTubeでは扱わない事に決めた。ただ、タイトルにあるように「外省人・本省人(人によっては内省人とも言う)」について誤解している人もいるようなので、せめてBlogだけでも残しておこうと思い筆を執った次第である。
まず、外省人・本省人とは何か?を簡単に説明すると、1945年、日本が終戦を迎えた後に、連合国の一般命令第一号によって台湾で施政権を行使する事となった中華民国が、1949年国共内戦で中国共産党に敗れたために、大量の中国国民が台湾へやってきたのを境に出来た言葉と言われている。
まず第一に、「省」とは何か?というと、中華民国、すなわち中国から見た「台湾省」という行政単位にあたる。そして、その台湾省に戦前から台湾に住んでいる人たちを「本省人」、戦後中国からやってきた200万人とも言われる人たちのことを「外省人」と呼んで区別する。
しかし、「台湾省」という呼び方は、中国(中華人民共和国、そして中華民国)からの視点の言葉であり、「台湾は中国の一部である」という主張を正当化するための言葉でもあると考える人もいる。私も台湾は戦後中国に返還されたとは考えていないので、台湾省という呼び方は嫌いであるし、不当なものだと考えている。
例えば「台湾は台湾であり、中国(中華)ではない」と主張する人にとってみれば、「本省人」に分類されることは「台湾省の人」という意味であり、「中国に属する」とも捉えられるため、違うという声をあげる人がいることも知っておかねばならない。
「外省人」という言葉についても、戦後すぐに中国からやってきた人たちは「外省人」と分類されても問題ないであろうが、その人たちの子供や孫を「外省人」と呼んでも良いのか難しい部分である。なぜなら、外省人と言われる1世代目の中国人が所謂「本省人」と結婚して出来た子供は「外省人」なのか、所謂「本省人」なのか、ということになる。またその子供となれば、さらに区別は難しくなるのは想像に難くない。
そして、所謂「本省人だから日本に親しみを感じる。中国に反感を持っている」という考え方も正しいとも言えるが、中共傀儡メディアである中国時報や中天新聞のオーナー(蔡衍明 氏)は所謂「本省人」なのだが、考え方はまったく中国共産党寄りであるので、皆様が想像するよな本省人とはかなり異なるケースも見受けられるのも事実である。
以下は、非常に役立つ記事であるため、併せて読むことをお勧めしたい。
日本人が捨てるべき「台湾への思い込み」
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/14466
例え方がおかしいのは百も承知なのだが、あえて日本人でも分かりやすく例えるならば以下の通りである。
先祖代々東京で生まれ育った人たちを東京人と呼び、集団就職などで地方から東京にやってきて、長年東京に住んでいる人たちを「東京人」と呼ばないのは、問題ないと思うし、ご納得いただけると思っている、だが、その子供や孫たちが東京で生まれ育った場合(しかも本籍は親の地方に存在する場合)、彼らは一体「どこの人」と呼べばよいのであろうか?生まれ育ったのが東京なのだから、立派な東京人だ、とも言えるし、「いや、本籍は〇〇だから、東京人とは言えない」という主張もあるだろう。
同じように戦後70年以上も経っており、生まれも育ちも台湾の所謂外省人もいるだろうし、親の仕事の関係で生まれも育ちも「中国」という所謂本省人もいるであろう。なので、そろそろ「外省人・本省人」という概念だけで台湾を見るのを考え直すのは如何だろうか。少なくとも私は、「本省人・外省人」という言葉を使わないようにしているし、使う場合には「所謂」というものを付けて使うようにしている。
2022年5月18日 編集(八度妖)
2022年9月29日 一部修正(八度妖)
P.S.では「外省人・本省人」を使わずに、台湾情勢を語る場合、どのように表現したらよいか?という問題にぶつかるかもしれない。その場合は
・在台中国人
・台湾を支持する台湾人
・中国を支持する台湾人
等のように、属性や思想を使った表現するのが良いかもしれない。