今日はTSMCに絡む噂について、誤った情報がネット社会に出回っているようですので、簡単に解説してまいりたいと思います。
ネット社会ではTSMCをファーウェイのフロント企業だ、とか、TSMCと中国半導体製造会社SMICはズブズブの関係だとか、TSMCは日本の産業を潰そうとしている、みたいな空気が流れ始めているからです。ただ、私はTSMCを擁護したいと思っている訳ではなく、根拠のない情報でTSMCを悪く言うのは宜しくないと思っているだけであります。もちろん、TSMCが本当に日本を潰そうとしている客観的な証拠があれば、私も「ふざけるな!TSMCに気をつけろ!」と主張するつもりですが、今の所そういう情報は、台湾の親中メディア、国民党寄りのメディアのニュースをみても無さそうです。
なお、TSMCはやり手の会社創業者や経営陣、そして社員も台湾のエリート大学卒業生しか採用しないという企業であるため、友達・仲間的な雰囲気で手を組む相手ではないことは確かです。まぁ、そもそも経済界はお金に関する競争社会なのですから、国内の企業同士で手を組む場合でも盲目的に相手を信用するということはあり得ないのですけどね。
さて、ではネットで流れている情報は?というと、これです。
もう一つ
ということで、
2010年の英語のニュース
を用いて、説明されています。日進月歩のIT業界で11年前のニュースを根拠にするってセンスには呆れてしまいます。
この時に確かにTSMCはSMICの株式の10%を取得しており、事実であることには間違いありません。そして、某張名人は、このニュースを元にTSMCはSMICと資本関係を持っていると主張をしている訳ですが、2つほど説明不足があります。
1つ目は、なぜ10%の株式を取得したか?と部分
TSMCは営業機密をSMICに盗まれて、裁判が行われその結果として賠償金の一部としてSMICの株をTSMCに譲渡するしたという事に触れていません。つまりは、この10%の株はSMICの将来性を見込んで取得した訳ではなく、賠償金の肩代わりとして取得した訳なのであります。
2つ目は、11年前のニュースなのだから現在どうなっているのか?という部分。
2020年時点では株式を売却して0.2%しか保有しておりません。
2010年時点ではSMICの10%の株を有する主要株主だったTSMCですが、適宜その株を売却して、現在はたったの0.2%にまで比率が下がっている訳ですから、経営に口出すとかそういうレベルで無い事はお分かりいただけると思いますし、今後残りのすべてを売却する可能性だって考えられるわけです。そもそもが先ほど述べた通り賠償金の肩代わりとして取得した株式でありますから。つまりは、株式取得することで、TSMCがSMICの経営に口出すという意図がなかったということが読み取れると思います。
そういう点に全く触れずに、
TSMCはSMICの株式を10%も持っている、SMICは解放軍とズブズブの関係だ、つまりTSMCは解放軍の為に半導体をせっせと作っている、という主張はいささか無理矢理かなぁと思います。
もちろん、私は一般人ですので実際に裏でどうなっているかは分かりませんが、某著名人も諜報機関並みの情報力を持っていると思えませんので、確実ではない情報を用いて、不安を煽るのは宜しくないと考えます。
ちなみにTSMCもSMICも上場企業ですので、財務諸表を見れば、資本関係についてある程度は分かります。ですので、これら著名人は財務諸表を読まない人たちをターゲットにして「台湾企業も怪しい!」と思わせようとしている現状に私は危惧しているわけであります。
もちろんTSMCは日本の企業ではないので、日本の為に良いことしてくれる!なんて馬鹿げた期待はしてはいけないのは言わずもがなですが。
いずれにしても、中共という大きな敵がいる状況下に、戦友とも言える台湾を必要以上に悪く言うことは日台分断にもつながりかねないので、根拠に乏しい情報を元にした批判は特に控えるべきですし、台湾に対して疑心暗鬼になるのは宜しくないかと思います。もちろん、多少疑うのは構いません。疑心暗鬼になるなと言っている訳です。
私は常日頃申しておりますが、日本と台湾は兄弟や家族のような存在だと思っております。ですが、実際の兄弟関係を見ても分かるように、「おい、お前の銀行の通帳とハンコを黙って貸してくれ」と兄弟に言われて、「はいはい、良いですよ~」なんて渡す人はいないと思います。日台関係も同じです。多くの人がこの銀行の通帳の例のように盲目的に台湾を信じるという人はいないと思いますが、重箱の隅をつつくような事例を取り出して、台湾に警戒せよ、とか、台湾は怪しい、と情報を発信する事は、中共の脅威がなくなるまではやらない方が良いと思うこの頃です。
いつも私の動画を視聴してくださる方は知ってらっしゃると思いますが、疑心暗鬼になることで得をするのがどこの国なのか、多くの人に知っていただきたいものです。
最後に私はかなり台湾贔屓の人間ですので、無意識のうちに多少誇張している部分があるかもしれません。ですので、なるべく中立な情報を知りたいと思う方は、私の話を聞いて、「あれ?」と感じることがあれば、そこから何割かを差し引いた感じが丁度良いのかもしれませんね。
2021年3月8日 編集(八度妖)
2022年9月30日 一部修正(八度妖)