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台湾 深田萌絵

浙江財閥・青幇が今も活躍していると思っている人へ

はっきり言います。そんなのは台湾の事を知らない事に付け込んだファンタジーな物語であります。では、日本人でも分かるように私もちょっとしたファンタジーな物語を作ってみました。


三河出身の徳川家康(旧称 松平元康)は、群雄割拠の戦国時代を生きた武将である。しかし1590年、当時の権力者豊臣秀吉の権力には勝てる状況でなかった徳川家は故郷を離れ関東へ移封を命じられ江戸を拠点とすることになったが、その後徳川家は江戸から権力を奪還し250年間に渡り栄華繁栄を極めた。その間、全国からの献上品などがあり、その富の総額は400万両、現在の価値にして20兆円もあると言われた。しかし幕末に薩長を中心とした新たな勢力に負け、政権を朝廷に奉還したが、その後も人脈と資金を活かして、現在に至るまで日本のディープステートとして、日本の政財界を牛耳っている事を知っている日本人は非常に少ない。

例えば、1990年代に首相になった細川護熙氏の先祖をたどると徳川家康に行きつく
また、
・元貴族院議員の本多 忠敬子爵
・日産自動車創設者の橋本増治郎氏
・丸善元社長の小柳津要人氏
・鐘紡2代目社長の津田信吾氏
・東建コーポレーション創設者の左右田稔氏
・トヨタ自動車会長の内山田竹志氏

らは徳川家康の出身地でもある三河(岡崎市)であることから、今も尚 徳川三河財閥の力が日本の政財界を牛耳っている事が明らかである。

また大衆の心を掴むのに適している芸能界においては、徳川家康の改名前の姓「松平」も大きな影響力を持っている。例えば松平健 氏のように老若男女から好かれる俳優は、芸能界でも大御所と呼ばれており、ここにも徳川家の影響力の大きさを伺い知ることができる。


こんな与太話、日本人であれば「ちょっとこじつけが強引すぎるよ」となることでしょうが、登場人物が外国人となると、なんだか妙に説得力があるように思えてしまうのが不思議だ。その最たる例として挙げられるのが、最近ネット社会で話題の「青幫(チンパン)・浙江財閥」ではないだろうか。祖先の出身地が浙江省というだけで、清朝末期・中華民国時代に中国で暗躍した秘密結社で、(ある著名人の話では)資産総額7兆円とも言われる財産を有していたと言われる青幇(チンパン)の一味であると言われているのがTSMC会長のモリス・チャン(張忠謀)氏。そして先祖が浙江省出身でもないにもかかわらず、何らかの原因で青幇の頭領になっている焦佑鈞氏とその家族(ちなみに焦家の祖先は江蘇省)。他にも鴻海精密工業創設者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏もチンパンの一味と言われている。

しかし、徳川埋蔵金を見ても分かるように、その財産が大政奉還後もなおどこかに存在していると言われているが、確かな証拠がない。同じように浙江財閥の7兆円といわれる財産も果たして本当に国共内戦に敗れて台湾に逃亡した秘密結社のメンバーが、今のように電子化されていない財産を台湾へ持ってくることが出来たのかも定かでない。国共内戦で国内の貨幣が変わったのであるから、巨額な資産を台湾に持ってくるとしたら有価証券ではない金の延べ棒等のような形しかないのであるが、7兆円規模の黄金が台湾に持ってこられたという記録は私は知らない。

ちなみに確かに浙江財閥の生き残りがいることは、台湾経済界でも話はある。例えば台湾産自動車を製造する「裕隆集集団」が浙江財閥の生き残りだと言われているが、総資産200億元(約700億円)と、台湾を裏で牛耳るというには少々物足りない額である。
(過去に浙江財閥がない、と発言したかもしれません。それはここにて訂正いたします。)

青幇(チンパン)や浙江財閥等の秘密結社に「ロマン」を求めて、一般社会で話されているストーリの逆張りをした主張をするのはファンタジーとしては面白いが、このように強引な人物・背景設定に疑問を感じない或いは感じても無視してしまうのはあまりにも滑稽であると台湾在住歴7年、台湾とビジネスをして20年になる私から老婆心ながら指摘させていただければと思う。

2021年2月13日 編集(八度妖)
2022年9月29日 一部修正(八度妖)

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台湾 深田萌絵

台湾が尖閣諸島の領有権を主張しているというのは日台分断工作!に加担

よく「台湾も中国と同じように戦後になって尖閣諸島の領有権を主張し始めた」という声を聞くようになりましたが、それは誤りです。
尖閣諸島の領有権を主張しているのは「華民」、英語名 Republic of CHINA (及びそれを熱烈に支持する人たち)です。Republic of TAIWAN※ ではありません。

※残念ながらRepublic of TAIWANはまだ存在しておりません


この問題を理解するには、台湾と中華民国の関係を知らなければならないのですが、
「中華民国=台湾」
という風な理解をしていると、日台分断工作の罠にまんまとハマってしまっている「ア保守」と言われてしまいますし、台湾独立・建国なんて夢のまた夢になってしまい、中共を利することにつながります。

台湾=中華民国ではないことについて簡単に説明すると、現在台湾島澎湖島を実効支配しているのは連合軍の一員であった蒋介石率いる中華民国政府。一応1996年に民主化が成し遂げられ新たな自由民主主義国家として国家運営が始まったものの、戦後200万人とも言われる中国からの難民とその子孫※、そして汚職にまみれた腐敗政権の利権に群がっていた所謂本省人と言われる人たちが台湾というアイデンティティに目覚めず、今なお存在しています。
(※外省人3世くらいになると「台湾は台湾だ」という考えを持つ人が出始めている)

一方「台湾国」、「台湾共和国」の建国を目指している人にとって見れば、「台湾国」は台湾島と澎湖島が領土であって、中華民国は連合国の都合によってやってきた大量の難民率いる亡命国家なのであります。また独立派・建国派にしてみれば、領土は台湾島と澎湖島であるため、尖閣諸島は日本の領土だと主張する人が大半なのです(そうでない人もいますが)。
以下の李登輝元総統の考えを継承しているのでしょう

では、なぜ蔡英文政権が「尖閣の領有権は中華民国にある」と言っているのか?というと、台湾は法治国家であるため、中華民国に不当に支配されている状態とは言え、法の則りながら国家運営を行なわなければならない上に、先ほど述べたように数百万人にも上る「中華民国」支持の有権者もおり、更には戦後不当に台湾を支配してきた中華民国政府が行なった「尖閣諸島は中華民国の領土である」という教育・プロパガンダを信じている台湾国民も多い事より、もし仮に李登輝元総統のように「日本の領土だ」なんて発言すると、将来行われる選挙の際に大敗してしまう可能性が大きいため、例え李登輝元総統の理念を継承していたとしても公の場で「尖閣の領有権は日本にある」なんて言えるはずもありません。また「尖閣の領有権は中華民国にある」と言わないと、野党からもちろん、無党派層や与党からも「弱腰だ」というような批判が来るため、蔡英文総統はこう発言せざるを得ないのであります。

しかし、蔡総統の発言を原文(中国語)で見てみると、蔡政権が李登輝元総統の理念を引き継いでいる事が垣間見ることができます。
蔡総統が就任してから一度たりとも「尖閣諸島は”台湾”の領土だ」と発言したことがありません。(総統就任前は「尖閣は台湾のものだ」という発言はありますが)

蔡総統はいつも「尖閣諸島は”中華民国”の領土だ」と発言しております。これはどういう事かというと、中華民国支持者を満足させつつ、日本との摩擦を減らすための言い回しであると読むことができます。つまりは、領有権を主張しているのは「中(華民)国なんです」という意味が込められていると推測できます。

また外交部の「台湾のしおり2020-2021」を見ると

中華民国(台湾)と中華民国を分けて使っていることから、尖閣諸島の争議に関して中華民国(亡命政府)の主張であり、台湾(または中華民国台湾)は主張をしてません/控えています、という配慮を見る事が出来ます。

ただ、総統就任中に「尖閣諸島は”台湾”の領土だ」と発言することが仮にあったとすれば、これは非常に危険な思想を持っていると判断する事ができます。また、民進党の立場としても「領有権は台湾にある」と主張したこともあるので、こちらも要注意となりますが、解決策があります。それは文の最後に記しておきます。

話は変わってしまうのですが、深田萌絵さんという著名人が

とツイートしており、あたかも台湾が領海侵犯をしているようなイメージを持たせる印象操作を行なっておりますが、台湾漁船が領海侵犯をしている事実は今の所確認されておりません。「侵入」と「進入」を書き間違えた可能性もありますが、過去の深田氏の発言から鑑みると台湾のイメージを悪くして、日本人同士内で争議を起こそうとしている発言とも捉える事ができます。

ちなみに、台湾漁船と台湾海巡署公船が進入しているのは「台湾と日本が主張する排他的経済水域が重なっている海域」であるため、「領海侵犯」ではありません。また日本と台湾の間には「日台漁業協定」が締結されているため、尖閣諸島周辺での漁は合法なのであります。

また蔡政権になってから、台湾漁船が日本の海上保安庁に拿捕された件数は0件(2016年6月~20年5月まで)になっており、台湾が法に則り漁をしていることが数字から読み取ることができます。また、海上保安庁も台湾漁船の周りに台湾海巡署公船がいるから拿捕ができず0件になっているのかもしれません。ただ、実際の現場ではすべての漁船が台湾公船と共に尖閣周辺の漁場に来ている訳ではないので、協定を無視した漁がある可能性は否めませんが、拿捕が0件だということは、台湾漁船側もルールを破るような漁はしていない(若しくはそういうルール違反は減った)と推測する事が出来ると思います。

101年は2012年。つまりは1911をプラスすると西暦に変換することができる。


いずれにしても台湾=中華民国と理解している状態では、親日のはずの台湾がなぜ尖閣諸島の領有権を主張しているのか?という誤った認識を持ち続けてしまい、日台分断を目論む輩の思う壺になってしまうこと、覚えておいてください。

もちろん私は「台湾は親日国なのだから、何の疑いも無く信用しなさい」ということを主張するつもりは一切ありません。台湾は日本にとって親友・兄弟のような存在です。しかし、実際の社会でもそうですが、親友・兄弟であったとしても、突然「黙ってあなたの預金通帳とハンコを貸してくれ」と言われたとしても、理由も聞かずに「ハイハイ、わかりました~」と何の疑いも無く貸す人はいないと思います。日台関係もこのように実社会と同じように信頼できる国であるものの、何の疑いも無く信用するというのはやってはいけないことであります。

また一般庶民は外交権も無いわけなので、民間外交という役割の中で、日台友好をやっていく際に、尖閣諸島の話を日本の政治家の先生に提起するのは良いとしても、同じ日本人に対して、そして台湾人に対して「台湾は尖閣の領有権を主張しているからケシカラン」と持ち出すのはナンセンスだと思います。それでも主張したいというのであれば「台湾」ではなく「中華民国(旧称シナ政府)」が主張しているということにしてください。

あとネット掲示板では「亜細亜新聞CHの八度妖は台湾擁護が極端すぎて気持ち悪い」とか「尖閣領有権は日本のみなのに台湾を擁護するとは売国奴だ」という書き込みがあるとのことですが、私は「尖閣諸島は日本固有の領土だ」という考えを持っておりますし、日台間にある尖閣に関するわだかまりを日本と台湾どちらにも益があるように解決したいと思っています。

最後に、日台間の尖閣諸島に関する争議を解決する方法とは、何か?
それは冒頭でも述べたように李登輝元総統の理念を継承している台湾独立、台湾建国という流れに対して、日本や日本国民がサポートする事であります。台湾独立派、建国派の人の一部には尖閣が日本領土だと確定する事に納得できないという人が出てくるかもしれませんが、李登輝元総統の理念を理解しているのであれば、むしろ独立・建国へのサポートを得られた方が最終的な利益につながると判断する人が大半だと思います。

2021年2月22日 編集(八度妖)
2022年9月29日 再UPLOAD(八度妖)

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台湾 韓国

日本海呼称、台湾政府の政府回答

今日は、ニュース配信ではないですが、2019年YouTubeに投稿した動画「台湾の地理に教科書に日本海に余計な呼称がついている」という問題について、視聴者の方より動画をアップロードした後に、最新版の教科書はどのように表記されているか?と問い合わせがありましたので、中国語で直接台湾の文科省に相当する「教育部」へ問い合わせたところ、次のような回答が返ってきました。

日付 2109年12月30日

八度 妖 様、こんにちは。
2019年12月18日に教育部部長(大臣に相当)宛ての電子メールで、台湾の中学校社会科教科書に日本海がどのように表記されているか?についてお問い合わせをいただいておりましたが、教科書に関する件につき、教育部から本院へ対応するようありました。貴殿お問い合わせの事項について、以下に本院が説明いたします。
一、国民中学社会科教科書内の地図を調べた結果、中国大陸の東側、長江河口北側と韓国済州島を結ぶ線より南側の水域について、「東海」と表記しています。日本列島の西側、ロシアと挑戦半島の東側の水域について、「日本海」と表記しており、また「日本海(東海)」とも表記しています。

二、教科書内に表記されている「日本海」または「日本海(東海)」は、日本と韓国が当該水域の名称について争議しているため、この部分については教科書出版会社は2種類の名称を並列する方式で表現しております。
三、教科書は一つの綱領、複数の教科書の精神に基づき、その内容が綱領の規範に違反がなく、不正確である疑いが無ければ、本院は教科書出版会社の編集内容を尊重しています。
貴殿の小中学校の教科書に対して関心をお持ちくださりありがとうございます。また何か問題がございましたら、本院教科書研究センター兪(電話番号)までお問い合わせください。本院職員が誠意をもって回答いたします。

国家教育研究院

はい、という回答をいただきました。回答の内容は納得のいくものではありませんでしたが、こんな外国人の問い合わせに対しても、きちんと回答してくださった台湾人には本当に感謝でございます。
まずは、対応、そして回答してくださった教育部及び国家教育研究院のスタッフの方にはお礼申し上げたいと存じます。ありがとうございました!


回答を私なりに解釈すると、教育指導綱領の規範に違反がない場合においては、教科書出版会社の判断に任せるということでした。

さて、我々が東シナ海と呼んでいる水域が「東海」と呼ばれることについては、私は全く異論はございません。世界最大で人口の最も多いユーラシア大陸の東側にある海ですので、東海でも問題ないと思います。しかし、日本海については、国家教育研究院の回答にもあったように日本、特に北海道、東北から見たら「西側」に存在するのに「東」の海というのはおかしな話だと思います。
既に東シナ海という「東海」が存在しているのに、なぜもう一つの「東海」という主張を台湾教育部は受け入れてしまっているのでしょうか?もしこの理論が通るのであれば、争議がある場所はすべて両者の主張を受け入れなければなりません。
ここはアルゼンチンの件で迅速な対応をしてくださった山田宏議員にまたお願いしたいところであります。
まずは、この結果をTweetし、山田議員も

と掛け合ってくださると回答をくださいましたが、既に2か月が経っておりますが、未だに動きが無さそうです。

進展がないのは恐らく 駐台湾日本大使館に相当する「日本台湾交流協会」の大使に相当する「台北事務所長」の泉裕泰氏がいわゆる外務省のチャイナ・スクール※ 出身であるため、「日本と韓国が揉める事」及び「それに関連して日台関係にも争議が起こる事」を良しと考える中国の影響を受けて積極的にこの呼称問題を解決しようとしていないのでは?と勘ぐってしまいます。

※チャイナ・スクール出身者すべてが「親中」であるわけではないと思うので、泉氏がどのような人物はあくまでも私個人の推測であり、泉氏を中傷する意図はまったくございません
22年追記:泉氏は就任から現在まで非常に前向きな評価が多いです。

いやぁ、韓国がが良く行う「ウソも100回言えば真実になる」という行為、台湾にも悪影響が出始めていますね。困ったもんですね~~。

2020年3月19日 編集・翻訳(八度妖)
2022年9月29日 一部修正・追記 (八度妖)

YouTubeでも配信中(2020年1月9日配信)
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台湾 深田萌絵

台湾を牛耳る「青幇(チンパン)」って何?

さて、今日は、台湾マフィアの青幇(チンパン)について解説いたします。

結論から言うと、

台湾には「青幇」というマフィアは
既に存在していますが、政財界を牛耳るような存在ではありません

厳密に言うと、「中華安清総会」という組織になって細々と活動を行っているといわれておりますが、そもそも表に出るような組織ではない為、あまり情報がないのが現状です。その点について、2022年長年青幇について取材してきた高橋玄さんという方から情報を頂きましたので、以下の記事もご覧いただくと幸いです。

プロからもらったガチの青幇情報
https://asia-news.tokyo/blog/115

以下は2020年当時の知識を元に書いたものですので、参考程度にしてください。


この中華安清総会についての情報があまり入って来ませんし、台湾人の友人・知人、会社の取引先に中華安清総会について聞いても「知らない、聞いた事すらない」という回答でした。また青幇についても聞いてみても「知らない」とか「なんか上海にそんな組織が昔あったね、それがどうかしたの?」と現代台湾にはそもそも存在しないのになぜそんなことを聞くんだい?というような反応でした。

ただ、日本のSNSでは、なぜか青幇という組織が独り歩きし、台湾の政治経済だけでなく、日本やアメリカ、チャイナなども裏で牛耳っているという、私にとっては「陰謀論」的な話をあちらこちらで耳にするようになりました。

私は台湾に10年弱住んだことがあり、その後も台湾と関わりのある仕事を10数年やっておりますので、一般の日本人よりは少しだけ台湾事情が分かっていると認識しておりますが、SNSで「青幇」という単語を初めて聞いたので、調べてみたところ、冒頭で結論を申し上げたようにそんな組織は現代の台湾では存在しないという結果に至りました。

では、なぜ青幇という組織が台湾を動かしているか?という説が日本で広がっているかと言うと、とあるインフルエンサーが青幇という台湾の闇組織/秘密結社が中共とグルになって日本の安全保障を脅かしているという論評を発表し拡散しているからであります。

青幇とはどんな組織なのか?今はどうなっているかと言う流れを本当に簡単ですが、ご紹介してまいりたいと存じます

まず、青幇の幇ですが、これは日本語でいう「〇〇会」や「〇〇組」や「〇〇団」「〇〇派閥」というような「集団」を意味する言葉なのですが、有名なのが中華マフィアの青幇や中国共産党の非公式派閥で江沢民派の上海幇、習近平派の陝西幇(せいせいぱん)などがあり、なんだかきな臭い、悪いイメージがついておりますが、悪いイメージだけではありません。台湾には「台南幇」というセブンイレブンやスターバックスを台湾で経営している統一企業という会社を中心とした企業の集まりもあるので、「〇〇幇」イコール「闇組織/秘密結社」と捉えるのは「山口組があっちの組織だから、熊谷組も同じようなあっちの組織だ」と言っているようなものです。幇は決して闇組織という意味ではないので、誤解なきようお願いします。


では、この青幇、どのような歴史なのか?本当に簡単に説明いたします。

時はさかのぼる事、辛亥革命前の清朝、長江下流域の蘇州、無錫などから収穫されたお米を北京へ陸地内の運河を使い運んでいた水夫さんたちがお互いを助けるために小さな組織を作っていたのですが、アヘン戦争後に中国沿岸部にいくつも港が設置され物資の運搬が海上輸送に代わってしまい、路頭に迷う事になってしまいました。
また、当時列強諸国が上海に租界を作ったため、上海は急速に発展し、国際的な商業都市になっていったわけであります。それにともない全国各地から良からぬ人たちも集まるようになり、先ほど述べた長江下流域で水夫だった人たちも上海へやってきて、生きるために良い事、悪い事をしながら、つぎつぎと組織が統合されていき、最終的に残ったのが青幇と洪門になります。それで、青幇は娯楽施設などを仕切っていたという事もあり、今はそうなのか分かりませんが、芸能界と闇社会のつながりは、当時上海にもあったと言われております。

いずれにしても青幇はこうして上海やその近郊で闇組織、秘密結社として発展していくわけであります。そしてその頃にはチャイナは既に清朝から辛亥革命を経て国民党率いる中華民国が支配していたのですが、国民党も決して清廉な政府と言う訳ではなく、蒋介石率いる国民党軍はゴロツキ・ならずものの寄せ集め感が漂う部分がありましたので、蒋介石にとっては、青幇を利用する事は似た者同士、都合が良かったわけであります。今でいうアウトソーシングですね。そうして政府の後ろ盾を得た青幇は上海で莫大な資金を得て中国で最大の秘密結社になったのですが、戦後国共内戦に後ろ盾であった国民党が敗れてしまったので、中国における活躍の場は縮小し、1950年代半ばには消滅したとされております。しかし、皆さんご存じのように国共内戦で蒋介石率いる国民党が敗れ、国民党とそのとりまき数百万人が一斉に台湾へ渡ったのですが、それと同じくして青幇も台湾へ渡ったり香港へ渡ったりしました。

ただ、台湾に渡った青幇は、娯楽施設などの資金源があった上海時代とは違い、国民党の後ろ盾があったと言え、上海時代のように自分の思うようには振舞えませんでした。しかも日本統治以前から存在した台湾土着の闇組織との対立もあり、また青幇は台湾と元々縁があったわけでもなく、台湾土着の闇組織を駆逐できるほど体力があったわけではなかったために、新たに組織を存続させる術を探さなければならず、青幇は土着の闇組織に加わったり、台湾最大の外省系マフィアの竹聯幇や四海幇などへ加入していき、実質消滅に至りました。ただ、1993年に青幇の精神を継承する組織が「中華安清総会」へと改名し細々と活動していることは事実であります。

つまりは、台湾人の記憶、特にアラフォー以下の世代の記憶に残っていない青幇を持ち出して、台湾のマフィアが云々というのはちゃんちゃらおかしな話であり、青幇が何なのか?を調べようとしているのは日本人くらいではないでしょうか?

ちなみに台湾におけるマフィアは

所謂外省人系組織が竹聯幇、四海幇
所謂本省人系組織が天道盟・牛埔幇

が4大反社勢力と言われており、これらは一般人においても認識されている反勢力となります。よくニュースなどに出てくる街頭でのいざこざなどはこれら組織が絡んでいることが多いです。

また竹聯幇の親分は張安楽氏、通称「白い狼」と言われる人物で、彼は台湾の泡沫政治団体「中華統一促進党」の党首でもありますが、これは先日動画でも取り上げた台湾総統選前に蔡総統のイメージをダウンさせるために中共から金銭を受けており工作活動をしていた団体であり、中共の工作機関であると言っても過言ではありません。そんな泡沫政治団体の声をあたかも台湾の民意だ!なんて取り上げる某インフルエンサーは何を考えているんでしょうかね。理解できません。

なお、台湾以外にも米国には華青幇という上海青幇の流れを汲んだ集団が存在しております。彼らの殆どが薬物販売などの犯罪に加担しているくらいで、半導体業界とか政治の世界とは程遠い集団であります。ちなみに現在台湾現地マフィアの天道盟と密接な関係を持っているようです。

このように華青幇という組織が現在もアメリカで存続しているものの、殆ど影響力を持っていないという良い例を1つお伝えしようと思います。

1984年、アメリカ、サンフランシスコで作家である中華民国系アメリカ人作家の「劉宜良」氏、ペンネーム「江南」が中華マフィアによって殺(あや)められるという事件が起きました。これは、江南が当時中華民国の総統であった蒋経国氏の経歴を暴露した「蒋経国伝」を出版したため、それを事前に察知した蒋経国氏が最大勢力であった外省系マフィアの竹聯幇に手を下すことを命令し、事件に至った訳であります。もし某インフルエンサーが言うように青幇が台湾を牛耳っているのであれば、政府トップが絡むような江南事件には青幇が登場してくるはずなのですが、昔から中華民国政府は、政府が直接手を下せないことは、こういう闇組織に外注していたのですが、政府が関わるような案件に関してなぜ青幇が出てこないかが不思議であります。

■蒋経国伝 (日本語)
台湾経済のめざましい発展は、蒋介石の後継者蒋経国の手腕に負うところが大きい。本書は蒋経国の伝記を史実に則して客観的にとらえ、中国現代史の実像にせまろうとするものである。蒋経国の一生は、まさに中国現代史の主要部分を体現している。青年時代、ソ連に留学して、マルクス・レーニン主義にとらえられて帰国して彼の、その後の歴史的展開の中での動きは、「天安門事件」を理解するうえでの一つの重要なカギを提示するものといえよう。


ちなみにそれに対する先ほどから述べているインフルエンサーの見解は「竹聯幇は青幇の下位組織である」と説明しております。つまりはそういう些細なことは下っ端にやらせている、とでも言いたいんでしょうかね。

なお、台湾最大の新聞社自由時報のWebサイトで「青幇」をキーワードとして検索してもヒットするのは16年間で89件。しかも記事を見ると、青幇とは関係のない記事がヒット。これは、 周揚青という名前の人が△▲を助ける/手伝うという中国語が「周揚青幇△▲」という文章になるためであります。
しかも中華マフィア青幇について書かれている記事も、戦後間もない頃について述べた記事だったりするので、現代社会において、青幇が半導体業界を牛耳っているとか、鴻海精密機械の創始者テリー・ゴー氏が青幇とかかわりがあるだの、パナソニック半導体事業を買収したヌヴォトンの親会社が青幇だというのはまったくのデタラメなのであります。

考えてみてください、鴻海もヌヴォトンの親会社Winbondもアメリカの会計基準に則り、更には日本の大手企業とも取引がある上場企業です。もし経営者が闇組織であれば、それらと企業と取引している日本企業の審査部門は節穴だということになります。しかも年間何百億、何千億の取引をしている相手なのですから、審査は更に厳しくなるはずですし、そういった話には敏感になっているはずです。海外においても反社会的勢力との取引を制限する法律があるため、株式上場企業の経営者が青幇と言われる中華マフィアである可能性は極めて低いわけであります。ただ、法律には触れないくらいえげつないことをしているのは否定しません。紳士協定という言葉が通じないことがたくさん、いや、そもそも紳士協定なんて概念すらないのかもしれませんね。

そうはいっても、中華マフィアで秘密結社だった「青幇」という単語は非常に謎めいた部分があるので、こういう陰謀論的な話に魅かれてしまうのは私も理解できます。私だって「M資金」や「徳川埋蔵金」とかそういう話は嫌いではありませんから。

さて、最後に言いたいこととしては、台湾にも闇組織があり、決して100%清廉潔白な国家と言う訳ではないという事です。一部の負の部分だけを取り上げて、それがあたかも全体がそうであるというような情報の発信をしている影響力を持つ人物がいたので、今回動画を作成するに至りました。

次回は「親中の台湾半導体業界」についてを解説しようと思ったのですが、かなり難しい部分があるので、筆が止まっております。ちょっと時間がかかってしまうかもしれません。

2020年12月15日 編集 (八度妖)
2022年9月29日 一部修正 (八度妖)

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台湾 深田萌絵

深田萌絵さんの”台湾デマ”に物申す!

今日は深田萌絵さんというファーウェイの危険性に対して警鐘を鳴らした著名人に関する内容となります。ちょっと批判的な内容となるため、そういうのは苦手だと仰る方は、別のサイトをご覧いただいた方が良いと思いますが、台湾好きとか台湾に興味ある、と仰る方は、時間のある限りご覧ください。

さて、この深田萌絵さんですが、肩書をITビジネスアナリストと言うだけあって、ITに明るいと言われております。そしてその知識を活かして、中共によるAIや5Gに潜む危険性についての書籍を出しており、一部の人からは非常に熱烈な支持をえており、SNSではフォロワーを数多く有する所謂インフルエンサーだとも言えると思います。そんな深田さんですが、台湾に関する情報だけは、眉つばものが多い、もしくは邪推なのですが、日台分断を図ろうとしているのではないか?と思うくらいの事実誤認も甚だしい発言もありましたので、今回簡単ではありますが、ご紹介したいと思います。

まず、1つ目
11月3日に配信された「ANAやJALも危機?世界の航空産業壊滅のなか利益を出す台湾企業」というタイトルの動画ですが、これが非常にミスリードとも印象操作とも言える内容でした。

この動画の内容を簡単にまとめると、タイトルのように世界の航空業界の業績が大赤字の中、台湾大手2社、中華航空とEVA航空だけが黒字であると言う事を述べております。これは確かに黒字という事実はありますが、なぜ黒字なのか?と言う点が全くのデタラメ。貨物部門での稼ぎが大きかったために黒字になったのですが、彼女曰く台湾と中共の貿易額が増えているデータを見て台湾から中共への製品輸出が増えたから中華航空とエバー航空が黒字だ、つまりは台湾と中共がグルになっている、というものでした。

いえ、完全に違います。

まず台湾と中共の貿易額が増えているという点においては、そのとおりで増えておりますが、その中には米国に実質制裁を加えられたファーウェイ向けの台湾半導体の駆け込み需要による取引も入っている訳で、ただ単に数字だけ見て台湾が中共とグルになっていると判断するのは非常に危険だと考えます。
ちなみに業績が落ち込まなかった最大の要因はリモートワークなどに必要なIT関連の出荷が非常の多かった事も上げられ、また中国向け以外にも日本向けや米国向けもプラス成長しているわけで、輸出額が増えた=中共とグルになっていると発言するのは宜しくないと考えます。

経済部(経産省に相当)情報サイトより
https://www.trade.gov.tw/Pages/List.aspx?nodeID=1375
また、台湾の航空会社2社の黒字の原因は、まずは半導体を含む電子部品や製品の輸出が多くなったことによる輸送量増加であり、もう一つは政府主導で行われているマスクや疫病関連の医療物資を発展途上国などへ支援する際に中華航空などが利用されたことであります。つまりは、会社全体のトータルの業績の数字ばかりが注目されておりますが、内訳とその背景を見ると台湾の航空会社2社の旅客部門に関してはANAやJALと同じく大赤字であるのには変わりありません。それを伝えずに、ただトータルの数字を見て「黒字なのは中共とグルになっているからだ!」と大きな影響力を持つ人が言うのは非常に宜しくないと考え、前々から物申そうと思っていたものの、なかなか出来ませんでしたが、今回、我慢の限界が来てしまいブログを書いている訳であります。

またこのブログの意図として彼女の人格を傷つける意図はまったくなく、ただ情報の精査をお願いしたいという願いであります。


他にも深田さんの台湾に関する情報には大きな誤りがあり、時には「あれ?この人、台湾の事全然知らないな」と思うような発言や、時には「あれ、この事実をこの角度から発言すると言う事は、台湾のイメージを悪くしようとしてるのかな?」という発言までありました。
簡単ですが、さらっとご紹介いたします。

まずはこれ

というTwitterの発言。現在はこのアカウントは凍結されて見ることは出来ませんが、現在のアカウントでも引き続き台湾批判をしておりますので、彼女の姿勢がぶれていないことが分かります。
まずは、ウイルスの株を取得したという点、どこからの情報なのかさっぱり分かりませんが、仮に本当だとしても、この対応は正しいと思います。仮にアフリカで未知の疫病が発生した場合、現地への調査団派遣はやったほうが良いに決まっていますし、ウイルスの株があれば分けてもらえるよう交渉するのが、衛生部、日本だと厚労省の役目だと思います。
ただ、それを情報を隠蔽して、優位に立つための手段として用いたというのは、その後の世界各国に無償で医療物資を支援する姿勢を見れば、誤りである事が分かるはずです。どこかの国は、医療物資の援助と言いながら、金銭を要求する国がありますからね。

次に日本でも有名になった台湾のIT大臣オードリー・タン氏について。

彼女のことをファーウェイのスパイだと言っておりますが、私のコンテンツでも言いましたが、オードリー氏はいち早くファーウェイを含む中共メーカーの危険性に警鐘を鳴らし、現在では台湾の政府機関では4G関連においても中共製の設備を使っておりません。それなのに、彼女の親が外省人だからというステレオタイプな判断なのか知りませんが、オードリー氏をスパイ呼ばわりしております。深田さんは何が狙いでこのような発言をしたのか、気になる所であります。

次に、香港関連ですが、蔡英文総統は実は中共と組んでいるという発言。

台湾にあるメディアの記事を引用してのツイートなのですが、この引用しているメディアというのが中共傀儡メディアの中国時報※、英語名チャイナタイムス(chinatimes)であり、常に蔡英文総統批判を行なっているメディアであります。それを引用して、更には深田さん自身の言葉も付け加えて蔡英文総統を悪くいう事は、自由民主の為に戦っている蔡総統の頑張りを踏みにじる発言かと思います。
※日本で言えば、朝日・毎日・東京新聞の恣意的な記事を引用しているイメージです

もちろん、私は、「台湾は親日なんだから無条件に受け入れろ!」とか「台湾批判をする奴は弾圧するべきだ」と言うつもりは全くありません。台湾にも悪い部分はありますし、物申したいことだってあります。しかし、今回の冒頭で紹介した航空業界における黒字のように、誤認、ミスリードで台湾を批判している事に関しては、「違う!」と声を挙げているだけであり、台湾批判をするな!と言いたいわけではない事、ご理解いただければと存じます。

あと先ほど冒頭で紹介したANAとJALは赤字なのに台湾航空会社だけ黒字の中で、看過できない発言もあった。

台湾の闇を暴けるくらいの有力な情報網を持っているのに、「中国EVERGREEN」と発言している。YouTubeの魅力の一つとして、編集時においてカットが許される、という点。しかし、この動画においては、カットをせず、また最初に「EVERGREEN」と正しく発言しているのにも関わらず、その後改めて「中国EVERGREEN」と言うあたり、わざと「中国」を付けているのではないか?と邪推してします。

さて、まだまだ深田さんの台湾に関する情報の誤りは山ほどあるのですが、ブログの内容が長すぎるので最後に一つ
2016年の発言なのですが、

台湾の人口2000万人のうち400万人が薬物中毒。小学校の給食にまで麻薬を混ぜるのが、中国共産党の戦略で云々、というもの。
これはまったくの根拠なき発言で、給食に麻薬が入ったという事件はなく、誤って入ってしまったという事例もありません。それなのに400万人が薬物中毒と、自身に影響力がある自覚がないのでしょうか。こんな事実と異なることを、鴻海によるシャープ買収を絡めるために、ありもしないことをでっちあげるのがジャーナリストとしての役目なのか甚だ疑問に思った次第でございます。

先程も述べたように深田さんのTwitterアカウントは個人情報を投稿した事により凍結されたため、紹介した発言は一部見ることが出来ませんが、台湾と日本の関係をもっと強くするべきだと考える私のような親台派の人間からすると、非常に迷惑な発言であることには変わりありません。

誤認や勘違い、知識不足による誤った情報の発信に関しては、私も恐らくやってしまっているのでしょうから、自分に甘く、他人にも甘い私八度妖ですので、多めに見るようにしておりますが、流石にここまで確信的に誤った情報を発信していたため、今回動画作成に至った次第でございますが、今回の批判はあくまでも発言内容についてであり、深田さんの人格を否定するつもりは全くございません。

初稿 2020年11月5日 編集(八度妖)
再UPLOAD 2022年9月29日 (八度妖)

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AI技術 台湾

AI技術で蘇るカラー化された国策映画「台南州 国民道場」

台湾史を知る上での資料の1つとして台湾映画協会によって製作された作品をYouTubeにアップしました。 これは台南州に建設された皇民教育の場である国民道場の様子を描いた作品となります。
撮影時期:1943年

台南州国民道場は、当時の台南州台南市桶盤淺汐見町に1941年に台南州民の体と精神、そして皇民精神を養う施設として建設が開始された。またその周りには多くの関連施設があり、大型の公民訓練地域となっていた。現在、台南市南区台南市立野球場から国民路一帯がその場所に当たる。台南州は元々このエリアに明治神宮外苑の総合体育場のような施設を建設しようとしたが、その大部分は未完成のままとなっている。その中にある忠霊塔は、台南州青年の奉仕によって建立されたものである。

上が当時の地図(下部が国民道場)、下がGoogle Map

1942年6月に国民道場は運用開始し、その施設には、大衆浴場、禊場、教室、講堂、食堂、本部、日輪舎があった。「日輪舎」または「日輪兵舎」は、円形の竹で出来た道場であるが故に「日輪」と呼ばれた。1棟が約38坪、計50人が居住していた。元々の計画として20棟を建て、1000人を収容する目標であった。訓練生は台南市各市郡の青年団員で、毎回300人を募集して1か月訓練していた。現在の竹溪禅寺会館の近くである。

写真の一番後方に三角の屋根が見えるのが「日輪舎」と呼ばれる兵舎である

台南州国民道場の周囲には合計12の施設を建設する計画があり、既存の台南市野球場、プールを含む、テニスコート、州民広場、州民道場、忠霊塔、相撲場、武徳殿、公会堂、陸上競技場、大弓場、馬場であった。第一期工事は1941年に始まり、州民道場、州民広場、相撲場と忠霊塔であり、後期工事は未完成である。(野球場とプールは中華民国時代の建設)

忠霊塔
元々は台南公園内にあった忠魂碑をその後戦争で亡くなった台南州民を祀るために台南忠霊塔として州民広場の東側へ移設した。当時の【台湾日日新報】では忠霊塔は蔡重要施設であるとされており、国民道場は「付設」という位置づけであった。1941年に完成し、最後の台湾総督安藤利吉が書いた「忠靈塔」という文字であったが、1948年「積健為雄」へと取り換えられた。

公会堂
現在市内にある公会堂は当時既に築30年以上であった。元々の計画では州民広場に収容人数3000人の台湾最大の公会堂を建築する予定であった。

1911年に建てられた台南公会堂。現在台南市指定の古跡に指定されている。

初稿 2021年3月1日 編集・翻訳(八度妖)
再UPLOAD 2022年9月29日 (八度妖)

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台湾

台南幇って何? 如何に成り立ったのか?秘密結社に非ず

「台南幇」が秘密結社だと不思議なことを言うITビジネスアナリストがいるが、それは全くのデタラメだ。「台南幇」は確実に存在するものの、秘密結社ではなく、セブンイレブン、スターバックス、ミスタードーナツ、イエローハット、無印良品、ヤマト運輸など幅広く事業展開している台湾の優良企業「統一企業(台湾株式市場TPE: 1216)」をメインとした企業の集まりであり、公然となっている存在である。

以下は台湾経済部(経産省に相当)工業局に記載されていた文章を中心に私なりにまとめたものである。


一般人にとって「台南幇」とは抽象的な概念であるが、本当の台南幇のメンバーから言わせると、明確な脈絡の発展だけでなく、関連企業にも明確な立ち位置というものが存在する。呉修斉※1が父親について行き、侯雨利※2が経営する新復興布行で働き始める時から序曲が展開し、その後呉修斉と弟の呉尊賢が別の新和興を創業し、16歳の高清愿が新和興に児童労働しにやって来たことから台南幇の関係人脈につながっていく。
侯雨利は早い頃から布生地屋を経営し、稼いでおり、当時台南市の布生地業界でトップであった。その後政府が紡織会社設立申請を開放したため、侯雨利の資金、呉三連の政治的人脈、呉修斉の経営能力を起訴として台南に紡織会社が設立した。これ以降、台南紡織は台南幇の旗艦事業となり、また台南幇を代表することになった。また台南紡織の収益、関連人物による手厚い共同投資、事業の拡大により、次第に台南幇の関連事業になっていった。

※1 現在台湾最大グループである「統一企業」の初代董事長
※2 台南紡織出資者の1人

台南幇の主要な事業には、台南紡織、坤慶紡織、環球コンクリート、太子建設と統一企業が挙げられるが、20年前の急速な発展により、台南幇は急速に成形されていった。但し民国77年(1988年)から呉三連、侯雨利、侯永都が相次いで亡くなった後に、台南幇は初めての世代交代が進んでいき、呉修斉は同時に台南紡織、太子建設、統一企業の董事長(会長に相当)に就任し盟主の地位を確実のものとした。
この後、台湾経済が急速に発展するにつれて、台南幇は伝統的な食品、紡績、建設会社から国際化、更なる多角化を展開していき、産業の多元化だけでなく、伝統産業から金融までカバーするようになった。

「台南幇」という言葉が定着し始めたのは、民国72年(1983年)1月の《天下雑誌》にて特集となった「藍色(国民党)の中で育った巨人企業ーー台南幇」で報道された後に、工商的な性質を持ったメディアの記事で使われるようになった。「台南幇」には地域的な意味として「台南」と「北門」※3が隠されているが、「台南」や「北門」と関係する企業は台南幇のメンバーでない。例えば北門地区出身の東帝士企業集団の陳由豪総裁、府城出身の奇美実業集団の許文龍氏は台南幇には含まれない。

※3 日本統治時代に設置された台南州の北門地区出身のメンバーが台南幇の主要メンバーであったため、北門の意味も含まれている

経済部工業局の公式サイトにある資料は以下の通り(中国語のみ)
https://www.tipo.org.tw/TC/about_textile_3_in.aspx?id=10695&chk=c42ee2df-348d-4fa6-9a99-5fb9e50ffe2b&param=pn%3D97%26key%3D

初稿 2020年8月25日 編集・翻訳(八度妖)
一部修正 2022年9月29日 (八度妖)


Webサイト管理者コメント

簡単に言ってしまえば、台湾の街中で見かけるセブン-イレブンやスターバックスと言った企業を経営しているのが統一企業で、台湾では誰もが知っている大企業である。その統一企業は台南幇のメンバーであるが、あるITビジネスアナリストのデタラメな主張により、台南幇も「青幇(チンパン)」」と同じように秘密結社の一つだと思われているようだ。しかし、「幇」は確かに秘密結社的なイメージを持っているものの、日本で「組」がヤ〇ザの組織と思ってしまうのと同様で、ゼネコンにも〇〇組という社名があるように、「〇〇幇」のすべてが暴力団や秘密結社という訳ではないこと、注意していただきたい。

もし統一企業が秘密結社や暴力団であれば、話好きの台湾人の格好の話題のネタとなっているであろうが、そのようなニュース記事はもちろん、電子掲示板でも見かけることができない。ちなみに統一企業は台湾株式市場に上場している優良企業であり、IR情報等を見ればわかるとおり、闇社会との取引は行なっていないとされている。

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台湾

外省人・本省人の使い方について

2022年5月、米国カリフォルニア州で台湾系米国人の鄭達志(ジョン・チェン)医師がデビッド・チョウ(周文偉)容疑者によって射殺されてしまい、また、このほかに5名が負傷するという痛ましい事件が起きたのは記憶に新しいと思うが、容疑者が「台湾生まれの米国籍を有する人物」ということで、容疑者は外省人である、というような文言がメディアに登場するようになり、この「外省人」という言葉に対して、見直そうという声も上がっている。

銃撃事件があった米カリフォルニア州の教会=アナドル通信社提供

なお、この事件に絡んでYouTubeでも解説しようとも思ったのだが、ちょっとショックが大きすぎるのと、YouTubeではこういう悲惨な事件に関してのコンテンツには厳しい規制が設けられることがあるので、YouTubeでは扱わない事に決めた。ただ、タイトルにあるように「外省人・本省人(人によっては内省人とも言う)」について誤解している人もいるようなので、せめてBlogだけでも残しておこうと思い筆を執った次第である。

まず、外省人・本省人とは何か?を簡単に説明すると、1945年、日本が終戦を迎えた後に、連合国の一般命令第一号によって台湾で施政権を行使する事となった中華民国が、1949年国共内戦で中国共産党に敗れたために、大量の中国国民が台湾へやってきたのを境に出来た言葉と言われている。

まず第一に、「省」とは何か?というと、中華民国、すなわち中国から見た「台湾省」という行政単位にあたる。そして、その台湾省に戦前から台湾に住んでいる人たちを「本省人」、戦後中国からやってきた200万人とも言われる人たちのことを「外省人」と呼んで区別する。

しかし、「台湾省」という呼び方は、中国(中華人民共和国、そして中華民国)からの視点の言葉であり、「台湾は中国の一部である」という主張を正当化するための言葉でもあると考える人もいる。私も台湾は戦後中国に返還されたとは考えていないので、台湾省という呼び方は嫌いであるし、不当なものだと考えている。

例えば「台湾は台湾であり、中国(中華)ではない」と主張する人にとってみれば、「本省人」に分類されることは「台湾省の人」という意味であり、「中国に属する」とも捉えられるため、違うという声をあげる人がいることも知っておかねばならない。

「外省人」という言葉についても、戦後すぐに中国からやってきた人たちは「外省人」と分類されても問題ないであろうが、その人たちの子供や孫を「外省人」と呼んでも良いのか難しい部分である。なぜなら、外省人と言われる1世代目の中国人が所謂「本省人」と結婚して出来た子供は「外省人」なのか、所謂「本省人」なのか、ということになる。またその子供となれば、さらに区別は難しくなるのは想像に難くない。

そして、所謂「本省人だから日本に親しみを感じる。中国に反感を持っている」という考え方も正しいとも言えるが、中共傀儡メディアである中国時報や中天新聞のオーナー(蔡衍明 氏)は所謂「本省人」なのだが、考え方はまったく中国共産党寄りであるので、皆様が想像するよな本省人とはかなり異なるケースも見受けられるのも事実である。

以下は、非常に役立つ記事であるため、併せて読むことをお勧めしたい。

日本人が捨てるべき「台湾への思い込み」
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/14466


例え方がおかしいのは百も承知なのだが、あえて日本人でも分かりやすく例えるならば以下の通りである。

先祖代々東京で生まれ育った人たちを東京人と呼び、集団就職などで地方から東京にやってきて、長年東京に住んでいる人たちを「東京人」と呼ばないのは、問題ないと思うし、ご納得いただけると思っている、だが、その子供や孫たちが東京で生まれ育った場合(しかも本籍は親の地方に存在する場合)、彼らは一体「どこの人」と呼べばよいのであろうか?生まれ育ったのが東京なのだから、立派な東京人だ、とも言えるし、「いや、本籍は〇〇だから、東京人とは言えない」という主張もあるだろう。

同じように戦後70年以上も経っており、生まれも育ちも台湾の所謂外省人もいるだろうし、親の仕事の関係で生まれも育ちも「中国」という所謂本省人もいるであろう。なので、そろそろ「外省人・本省人」という概念だけで台湾を見るのを考え直すのは如何だろうか。少なくとも私は、「本省人・外省人」という言葉を使わないようにしているし、使う場合には「所謂」というものを付けて使うようにしている。

2022年5月18日 編集(八度妖)
2022年9月29日 一部修正(八度妖)

P.S.では「外省人・本省人」を使わずに、台湾情勢を語る場合、どのように表現したらよいか?という問題にぶつかるかもしれない。その場合は
・在台中国人
・台湾を支持する台湾人
・中国を支持する台湾人
等のように、属性や思想を使った表現するのが良いかもしれない。

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台湾 深田萌絵

プロからもらったガチの青幇(チンパン)情報

以前「青幇」なんて存在しない!と大風呂敷を広げた動画をアップいたしましたが、完全に間違えでした。申し訳ございませんでした。

というのも、似たような内容をBlogにもアップしていたのですが、なんと青幇を30年にも渡って取材し、青幇とも交流のある映画監督GEN TAKAHASHIさんから抗議のコメントを頂き、正しい情報を教えてくださいました。
今まで青幇、というと戦前中国の上海やその周りの浙江省などで幅広く活発に活動していた組織で、戦後国共内戦の影響でその活動拠点を台湾に移し、衰退していった、と言うものかと思います。
台湾に活動の場を移した後のことについて、情報があまりにも少ないので、色々な情報が錯綜しておりますが、どうやら簡単に纏めると次の見解が正しいようです。

チンパンは存在しているが、
政財界を牛耳るようなことはない

では、チンパンを取材しているGEN TAKAHASHIさんの主張がどういうものなのか、見てまいりましょうか。


はじめまして。貴殿の本稿につきまして疑義と抗議の主旨でコメントさせて頂きます。

→これは「台湾を牛耳る青幫って何?」という私のブログについてのコメントでございます。続けます

 私は台湾の青幇を30年にわたって取材し、現在も交流がある日本の映画監督でGEN TAKAHASHI(高橋玄)と申します。私の来歴については名前で検索して頂ければ幸いです。
 さてまずは一読、貴殿の本稿主旨が不明でした。「青幇というマフィアが存在しない」とのことですが、それは「青幇という組織が存在しない」の意であると解して良いのでしょうか?
もしそうであれば、貴殿の青幇についての知識と情報は、入口の段階から完全に間違っています。

→はい、元々私のブログでは、今インターネットの世界では一部の陰謀論者が青幫は台湾の政財界を牛耳っており、特に台湾の半導体業界、TSMCなどを牛耳っており、日本を苦しめようとしている悪の存在だ!という主張をしているので、それを分かりやくシンプルに否定したいがために「青幫というマフィアが存在しない」とブログに書いていたのは事実です。ちなみに現在は「台湾を牛耳るようなマフィアは存在しない」に変更しています。では続けます。

「世界安清総会と名前を変え」などと書いておられますが、そもそも「青幇」という呼称自体は組織名ではありません。そのような基礎知識もなく「細々と活動している」などの、あたかも「何の力もない有名無実の元マフィア」であるかの印象を、日本語で宣伝することは日本人の青幇に対する理解を妨げ、彼ら青幇会員を小バカにしているようにさえ見受けられ、彼らと現に親交のある私としては看過できません。

→これは私の表現の仕方がまずかったかもしれませんが、小バカにするつもりはありません。

 「細々」どころか、青幇は「洪門(一般読者への註:ホンメンと読みます)」と連携するかたちで、一回の大会(会員同士が集まる宴会)で数千人規模の会員が、新北市のホテルなどを会場にして盛大に集まるという活動を現在でもしています。そのホテル周囲では公安警察がビデオカメラで参加者の人定を行うという、ある種、日本のヤクザ組織、思想集団に対する警戒と同様の風景が見られます。

→これは私の完全な情報不足でした。なるほど数千人規模ですと細々なんて言えませんね。

 少なくともコロナ直前の2019年でもそのような洪門の集会は行われており、その指導者たちの多くは青幇でもありますから、貴殿の記事での「青幇というマフィアは存在しない」との記述が「青幇という組織が存在しない」であったとしても正確性を欠いています。

→はい、これは私の考え方を改める必要があると思います。本当にこういうコメントは有難いと思います。

 また、「台湾を牛耳る青幇」という表現それ自体、非常に意図的な印象を受けます。たとえば、日本の任侠組織・山口組は世界的なネットワークに利して広大な経済活動を行っていますが、だからといって「山口組が世界を牛耳っている」という事実はありません。
 失礼な言い方であれば謝罪しますが、貴殿のような現地(特に中国語圏)に詳しく普通話や台湾語を解する「事情通」という方の情報発信は、それだけで在邦日本人には正確な情報であるように受け取られる傾向があります。

→これはこのコメントの返信にも書いていますが、某YouTuberの主張をブログに書いただけなのですが、それを私が主張しているとGEN TAKAHASHIさんが勘違いしていたようです。

 貴殿は「中華安清総会」の情報が「ほとんど入らない」と書いておりますが、つまりは青幇について現在の実態を何も知らないのに「周囲の台湾人の誰に聞いても知らない」からといって「存在しない」と言っているも同然ではないでしょうか。

→情報の扱いは本当に注意しなければなりませんよね。このご指摘があってから、「周りが誰も知らない」とかいう表現方法は説得力に欠けると、思い知らされました。

 また、意図してのことか貴殿は「洪門(ホンメン)」について触れていません。台湾人にとっては青幇より一層身近にある洪門を語らずに青幇を語ることは出来ません。なぜなら青幇は、もとは洪門から派生した組織形態であり、前述のとおり「青幇」は組織名ではなく、いわば「種目」のような形態の名称だからです。

→これは、私のブログの主旨が台湾を牛耳る青幫というトンデモ話を否定したいがために青幫だけにクローズアップした為でしたが、確かに洪門についても触れなければなりませんでしたね。反省です。

 そのようなこともご存じないような貴殿の記事は、読者に誤った情報を付与しますから、訂正なり追記をお願い申し上げたいところです。

→はい、このようなご指摘を頂いたので、ブログ冒頭ではGEN TAKAHASHIさんのコメントを併せて読むように促す文章を掲載しておきました。

 ここで宣伝のようではありますが、私は世界で初めて青幇の実態の一部を描いた『名もなき絆』という映画を監督し昨年劇場公開しました。本作は現在、U-NEXTやAmazonなどの配信でご覧いただけます。

『名もなき絆』U-NEXT
https://video.unext.jp/title/SID0065268

→U-NEXTやアマゾンプライムを見られる人はご覧いただければと存じます。

また、現在都知事の小池百合子氏とは師弟関係にある、安倍英樹氏(1955年生まれ)は洪門幹部(洪門南華山龍義同副堂主)にまでなられた日本人ですが、彼が2007年に上梓した『洪門人による洪門正史ー歴史・精神・儀式と組織ー』(錦正社)という、おそらく現在入手困難な書籍では、青幇の非常に正確な情報と、青幇が現在でも活動していることを述べられています。
 私や安倍氏(私は面識ありませんが)についての情報を述べますのは、台湾通との貴殿が「自分のまわりの台湾人は誰も知らない」との理由、青幇が歴史的に消滅したと論説することに対しての、反論のエビデンスとしてであります。

→私の主張はほんわかとした何となく存在しない、という感じであるのですが、GEN TAKAHASHIさんや安倍さんについては、どうやらきちんと証拠を集めて解説されているようですね。入手困難な書籍なので、読むのが難しいかもしれませんね。

 一方、貴殿の記事は、台湾生活が長いというだけで、青幇(つまりは洪門と一体化した中国人の相互扶助文化)について、ほとんど無知で、特に現在の状況は何もご存知ないとしか思われません。

→これは、プロの方からそう指摘されてもぐうの音も出ませんね。半導体業界を牛耳る青幫はいませんよ、ということを強調したくて、「青幫なんか存在しない」と主張した私の誤りです。

 青幇(洪門も含め)は、基本的に政治、思想、宗教の統一性はありません。貴殿が「泡沫政党の党首」と揶揄されていた張安楽氏とは私も直截面識があり、彼のFacebookでの対談番組にも出演したことがありますが、彼の政治的立場や主張は時に他の会員と反対のことも珍しくありません。日本流にいえば、自民党党員や党友に近いといっても間違いではありませんが、現在はそれよりも「個人」で構成されています(そのあたりの中華圏の文化は貴殿もご承知でしょう)。

→このご指摘はもっともとですね。党全体の意向というよりも「個人」という単位で見て行かなければならないということですね。ただ、台湾独立派の私からすると、中華統一促進党は台湾独立において非常にやっかいな存在である為、意識的、無意識を含めて彼ら全体を悪く言ってしまっている傾向があるんだと思います。
私が時々、「私はかなり台湾独立派的な立場で発言しているので、統一派などの主張と総裁するくらいがちょうどよい」と主張しますが、それは意識的に彼ら統一派などの考えを悪く言っている時と判断して良いと思います。

 ここ10年ほどは青幇のトップと洪門のトップは同一人物ですが、貴殿はそれも存じ上げないようです。
 貴殿の本件無責任な記事に対して抗議を申し上げまして、正確な情報発信をお願いしたいところです。

→ブログでも動画でも訂正動画を出していなかったので、まずは動画で訂正動画を出させていただきました。ご指摘誠にありがとうございます。

追伸

前記、私のコメントをご自分の「台湾通」ぶりの限界を露呈するからという理由で承認、公開されないのでしたら、本稿記事ごと削除して頂きたいと思います。
なおも、それさえ無視されるときは、機会をみて、貴殿の記事と私のコメントをネットの第三者メディアで公開させて頂きます旨、予め申し添え致します。

→これは結構きつい言い方でしたが、それだけ怒り心頭だったという現れだということですね。私の主張には、どこか自身の無い部分があったし、GEN TAKAHASHIさんにも勘違いがあったので、ブログは消さないでおこうと思いますが、動画の方は、訂正が効かないので一旦限定公開という形にしております。

当時YouTubeにてアップロードしていた動画のサムネイル

さて、このようなコメントを頂き、私のコメントを次のように返しました。

コメントありがとうございます。
青幇について長年取材されているということで、私の無知であることが分かりました。ご指摘誠にありがとうございます。機会を見て、本記事を変更するなり、削除するなりしたいと思います。

「青幇」という名前の組織がないのは存じております。また「台湾を牛耳る青幇」は私が述べたのではなく「深田萌絵」氏という言論人が述べている事をそのまま記しており、私自身も高橋様と同じように「台湾を牛耳っている」とは思っておりません。ただ日本の黒社会と同じように政財界にある程度の力を持っている事はあると思っております。(牛耳るというのは大げさな表現だと私は思っております)

そんな深田氏の発言を信じる人が多いため、このような記事を書いているのですが、誤解を与える可能性があるとのこと、承知いたしました。ただ、高橋様にはぜひ深田萌絵氏への疑義・抗議、または彼女の主張が正しければ賛同をお願いいたします。

http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-3403.html
https://www.youtube.com/watch?v=52RNTud4ea4

などなど。基本的には書籍には色々と青幇について書かれているようです。

高橋様の深田氏への対応を見た上で、私の記事の削除が必要だった場合には、削除したうえで、訂正の記事として高橋様のコメントもご紹介したいと思います。

こういう裏社会はなかなかメディアでは報じられることが無いため、高橋様のコメントは大変ありがたいと思うと共に、自分の無知を恥じるべきだと感じました。ご指摘、誠にありがとうございます。
コメントを頂いたにもかかわらず、質問させてください。
既述「深田萌絵」氏は半導体業界は青幇が牛耳っている、特に最先端半導体製造メーカーTSMCやWinbond(華邦電子)等の企業も青幇が牛耳っていると主張しております。これは本当のことでしょうか?これさえ分かれば、私としては、十分納得できることになりますし、誤解を広めてはならないという気持ちになります。お返事いただけると幸いです。

また、映画「名もなき絆」を拝見しました。映画内に出てくる「青幇」を語って金儲けする女というのが既述深田氏に似ているような気がしました。
いずれにしても今まで日本では「青幇」について語る言論人は殆どおらず、そのため、私のような「一般人が知らないからもういない」という論調から、「青幇が世界を牛耳っている」という言論人の破天荒な論調まで、様々な形で情報が拡散されておりましたので、この映画を見て、また高橋様の論調を広げる事で正しく理解されるようになると信じております。

こんな感じですね。で、GEN TAKAHASHIさんはきちんと次のようなお返事を下さいました。きちんと深田萌絵氏の青幫についても触れてくださっています。

ご丁寧な対応に感謝致します。

 私のほうも貴殿の記事のタイトル自体が、深田某氏の言説を反映させたものだと知らずに失礼致しました。不明の至りですが、私は深田某氏のことを知りませんでした。
 今回、貴殿にご教示頂いたリンクを少し見ましたが、一読して「青幇トンデモ情報」のようなものであることはすぐに判りました。深田某氏の背景は知る由もありませんが、それこそ陰謀論好きの、現実の現在の青幇について何も知らない方でしょう。そうでなければ、彼女には、青幇のネガティヴ・キャンペーンを工作する何らかの背景があるかもしれませんが、いずれにしても「ほぼほぼフィクション」と言わざるを得ません。
 ただ、このことは実は「ニセ青幇」がいることにも関係しています。それは日本人でも台湾人でも青幇を騙る者が存在します。なにしろ秘密結社というくらいですから、外部からは内情が見えないため、いくらでも「おはなし」が創作出来るわけで、それを商材にすることも簡単です。
 貴殿もよくご存知かと思いますが、日本、台湾、香港、大陸やマラッカ半島近隣も含むアジア文化圏では「兄貴!」「好兄弟!」などという、日本だとヤクザ的なノリの呼称が普通の人々の間でも使われます。そうした文化では、青幇のような秘密結社の「秘密」というものも擬制家族の身内感覚で、簡単に組織外の一般市民に間違ったまま出てしまうことがあります。
たとえば、深田某氏のいう「TSMや華邦電子も青幇が支配している」との「おはなし」も、その情報源となった人物が組織の会員である「兄弟」から聞きかじった話を、深田某氏に「膨らませて」話したということも考えられます。
 また別の可能性として、青幇会員の誰かが、普通にTSMCなどの企業の従業員だということもあるでしょう。その従業員が青幇であることを深田某氏の情報源となった「兄弟」が知っていて、伝言ゲームのように「青幇が支配している」とまで「盛られた」のかもしれません。
 これは青幇が「秘密結社」と言われるときの、「秘密の種類」と関係あるかと思います。青幇(洪門でも)の宴会や集会には、非会員も普通に出入りするのです。会員の家族だからといって、世帯ごと青幇に入門する義務などありませんし、その意味では「ウチの亭主は青幇ですよ」というレベルの秘密と、会員であるその亭主自身しか知らない組織的な秘密では種類が違います。この点は、社会一般にどんな分野の共同体でも普通のことでしょう。一般的には、夫の会社が計画する企業買収の情報を、妻が知らないほうが普通です。

 さて貴殿は、私が深田某氏にも抗議することをご希望のようですが、彼女には申し訳ないのですが、あのレベルの「トンデモ話」に私がかかわるつもりはありません。
 ただし、本稿についての私の一連のコメントを、彼女のブログなりに、貴殿または匿名で転載(転送)されることは構いません。
深田某氏が「インフルエンサー」とのことですが、少なくとも私は台湾の青幇幹部たちから、その名を聞いたこともありません。

→これは非常に重要な証言ですね。もしあれだけ「青幫が~」と核心に迫るような真実だとしたら、青幫が深田さんをマークしてもおかしくないのですが、それがないとなると、GEN TAKAHASHIさんが仰るように「トンデモ話」、「ほぼほぼフィクション」ということで間違いないと思います。続けます。

 一方、最初に私が貴殿の本稿記事に抗議した主旨は、「現在、青幇は存在しない」という認識は誤りであるというものであり、また、貴殿のブログでの他の記事からも貴殿の情報発信には普遍性があり、読者からも信頼されているものとお見受けしたからこそ「青幇は現在でも存在していますよ」という事実をお報せしたものです。
仮に、私が最初にみた「青幇トンデモ話」が深田某氏のものでしたら、最初から相手にしていないかと思います。
そのうえで、もし私が深田某氏に抗議しなければ、それが「現在、青幇が存在しない」ことの証左になるというご主旨でしたら、これ以後、特に貴殿に申し上げることはありません。
 私の映画を観て頂きまして恐縮ですが、映画のラストシーンで主人公の「老大」が言うように、青幇は宣伝するような存在ではありません。
 私は長年彼らを取材してきた映画監督だからこそ、彼らとの信頼関係からあの映画が生まれたのであり、実際には彼らにとっては、組織外の人たちに青幇がどう言われようが、まるで相手にしていません。私が映画で描きたいと言ったから、彼らが許可してくれたのです。もし深田某氏が、本物の青幇会員と親しい関係にあれば、あのような「青幇トンデモ話」は書かないでしょう。かといって、組織が排撃するレベルではないので、笑って放っておかれるだけです。
 ただ、繰り返しになりますが、貴殿は台湾を愛する方であることは貴殿のブログからもじゅうぶんに伝わりますから、私の心情として「青幇は存続している」という事実をお知らせしたかったということです。
 なお蛇足ですが、もしも私の一連のコメントについて、私が青幇幹部と長年交流してきた証拠を見せろということでしたら、貴殿の台湾のご友人関係から洪門や青幇に通じる人間を辿って、私の映画『名もなき絆』を観てもらえば、そこに映っている「老大」たちが、すべて実在する現在の青幇の指導者であることは判ります。台北の公安警察でも判ります(教えてくれるとは思えませんが)。 
 貴殿から頂いた映画の感想で、登場人物である「ニセ青幇の女」が深田某氏を彷彿させるというのは、指摘されてまさにそうだと思いました。私は彼女の存在を知らないまま映画を作っていましたが、モデルになった「ニセ青幇女性」は存在していました(殺されてはいませんが…苦笑)。

長くなりましたが、貴殿本稿に関する私からの発言は以上とさせて頂きます。
今後は、もっと大規模な国際配給の企画として、青幇・洪門を舞台とした物語の映画を作りたいと考えています。
いつか台湾でお会いすることもあるかもしれませんが、その時は白酒でもやりましょう。

再度の追伸で恐縮です。

「ニセ青幇の女」が主人公として登場する映画は
ご覧頂いた『名もなき絆』の1本前の短編『静かなる国』です。
あれは17年前からの4部連作になっており『名もなき絆』が最新ですが『静かなる国』も、コロナ真っ最中での青幇の日本での一幕を描いています。
https://video.unext.jp/play/SID0065267/ED00350273


はい、以上が私の返信に対する回答でした。深田某氏の主張がトンデモ話であることが証明されたかと思いますが、ウィンボンドのショウユウキン氏が青幫のトップであるということを何かにつけて主張していますが、それが本当なのかを念のため、確認してみました。

高橋様

私のくだらない質問にも真摯に答えていただき、本当にありがとうございます。このお返事を以って高橋様の投稿は終わりと言う事で残念でなりません。(私としてはもっと知りたいというのが現状です)

深田氏の青幫話についての高橋様の見解も承知いたしました。反論・抗議するに値しない「トンデモ情報」であると考えていらっしゃるのは理解できましたが、深田某氏は話し方が上手いためなのか、そんな「トンデモ情報」を信じる人が数多くいるのも事実で、私のブログを読む人の数十倍、いや、数百倍もの影響力がある人物であり、論調でもあると私は考えております。実際にYouTubeでは登録者数10数万人と、所謂中堅レベルのYouTuberとも言える存在でございます。
いずれにしても、反論するに値しない話との事ですので、高橋様に1点お願いと言うか、教えていただきたい事があります。

彼女は「青幫のトップはWinbond(華邦電子)社のトップ「焦佑鈞」氏である、と何度も明言しておりますが、こちらは「そんな事実はない」と言う認識でよろしいでしょうか?
出典元URL
http://fukadamoe.blog.fc2.com/blog-entry-4179.html

いずれにしても、高橋様からコメントを頂き、自分の見識の狭さ、情報分析能力の未熟さを実感したのは事実であり、その道のプロの方からご指摘いただけたことは本当にありがたい事だと考えております。

本日退勤後、ぜひ『静かなる国』を視聴させていただきます!!今からワクワク感でいっぱいです。また、新作等が出ましたら、お知らせいただけると幸いです。高橋様、本当にありがとうございました。

このコメントに対して、回答を頂きました。

八度様

貴殿からの最後のご質問に、iPhoneからの送信で回答しましたが
ここには表示されないようでした。
念のために、再度、ご質問の件のみ回答します。

青幇のトップは華邦電子のトップの焦佑鈞という方ではありません。

深田某氏は、青幇についての「創作」を自分の著作などの商材にしているようですが、このようなことを公言している時点で、彼女(またはその情報源)が、青幇に関してまったくの無知で、おそらく実際のメンバーをひとりとして知らないことも明白です。

日本の皆まさにおかれましては、深田某氏の青幇の「おはなし」は漫画だと思って娯楽として楽しんで頂ければ良いかと思います。


はい、以上が30年にも渡って青幫について取材している映画監督GEN TAKAHASHIさんとのやり取りでした。如何でしたでしょうか?私の「青幫は半導体業界や政治の世界を牛耳っている」という深田萌絵氏の主張がまったくの「トンデモ話」であることを強調がしたいために、ちょっと拡大解釈してしまったことでGEN TAKAHASHIさんを怒らせてしまったのですが、GEN TAKAHASHIさんの勘違いもあって、結局のところ円満に情報交換ができました。

いずれにしても「青幫が台湾を牛耳っている」というのはまったくのデタラメ、ということで間違いなさそうですね。それにしてもWinbondのトップの焦佑鈞さんは、こんなトンデモ話が日本では結構多くの人が信じてしまっているという、想定外の事態になっていることを把握しているんですかね。ただ、仮に焦佑鈞さんが裁判を起こしたりすると、深田氏はそれを利用して「ほら、私を消そうとしている」と騒ぎ立てて注目を浴びようとするでしょうから、焦佑鈞さんもTSMCも触らぬなんとかに祟りなし、ということなんでしょうかね。私も暫く深田さんには触れずにいましたが、今回GEN TAKAHASHIさんからきちんとした情報があり、このコメントを転載しても良いとの許可も頂きましたので今回動画&Blogにさせていただきました。

初稿 2022年6月7日 編集(八度妖)
修正 2022年9月29日(八度妖)

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2分で分かる台湾政策法

2022年9月14日、日本では15日、アメリカ上院外交委員会は台湾政策法案を賛成多数で可決しました。米国による台湾への軍事支援を大幅に強化する内容のほか、中国が台湾に対し敵対行動に出た場合の対中制裁に関する文言も盛り込まれていて、大きな転換点となる法案だとも言われています。ですので、今回はその台湾政策法案について重要な部分を800文字程度で説明します。

ただ注意しなければならないのは、この後、来年1月までに上院、下院で通過させなければならず、過去の法案の策定に際して、上院や下院を通過する際に変更が加えられて、大幅に台湾重視の内容が薄くなる可能性もあるということですね。

それでは台湾政策法案とは何ぞや?について解説いたします。

1、軍事面
注目すべきは2つの条文が加えられたことです。それは台湾に「主要な非NATO同盟国」MNNAと同等の地位与えると言う事、もう一つが台湾に4年間で45億ドルの軍事援助を行ない、5年目は20億ドルの追加支援を行なうというものです。「主要な非NATO同盟国」MNNAについては、集団的自衛の対象になるわけではなく、NATOに似た同盟と表現した方が良いかもしれませんね。詳しく知りたい方はMNNAで検索してください

2、外交面
台湾の駐米大使館に相当する駐米台北経済文化代表処を台湾代表処へ名称変更を推奨するという条文。これは強制性はないのですが、いずれにしても台北なんちゃらという曖昧な名称からきちんと台湾を名乗る機関が設立されることは良い事だと思います。
そして1971年国連のアルバニア決議と言われる中華民国が国連を脱退し、中国代表が中国共産党に変わったということに絡んでなのですが、この決議には台湾の代表権問題は処理されておらず、台湾の主権に関する声明が一切ないこと立場を取ることが盛り込まれています。つまり台湾の主権は中国には無い、台湾は中国の一部ではないという意味ですね。
また、米国内で中華民国の旗や軍服を見せる事を禁じる規定を廃止することを求める項目も盛り込まれていますが、私はこの旗が台湾の旗だとは思っていないので、なんとも歯がゆい気持ちです。詳しくはこちらの動画をご覧ください。

3、経済、国際社会への参与、及び文化面
米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」へ台湾を加入させるという点。台湾経済をアメリカとして支援するという声明ですね。

4、中国への制裁
中国が台湾に対して現状を変更しようとする行動があった場合に、中国の指導層や当局者、金融機関などに対する資産凍結などの制裁措置が盛り込まれていますが、これはちょっと制裁が弱いような気がしますが、無いよりはマシかなと思います。

以上が台湾政策法案の重点となりますが、軍事面では元々MNNAの同盟国という部分が、同盟国と同等の地位というように慎重な姿勢が取られる一方、資金面では融資から無償提供と追加支援という形で支援が手厚くなったのと共に最近ではバイデン大統領が軍事侵攻があれば台湾を守ると明言したことは、国際情勢が大きく変わっている証拠ですね。ただ、上院、下院と審議されるにつれて法案の内容が変更される可能性が高いため、最終的にどのような内容になるのか、または否決されてしまうのか、注目していきたいと思います。

最近は本業が忙しくなかなか台湾情勢をお伝え出来ず、お叱りの声を頂いております。大変申し訳ないと思いますが、なかなか視聴回数も伸びずYouTube・ブログを本業にするという決断もできないため、自分のペースで配信していこうと思っております。ご理解いただければ幸いです。

2022年9月21日 編集・翻訳 八度妖