カテゴリー
ニュース 台湾 深田萌絵

tsmcに関する3の疑問に答えてみた

tsmcに対する疑問について、企業や政府機関の公式サイトや台湾のニュースメディアを参考にして半導体に詳しくない人でも分かりやすいようにまとめてみました。

では早速参ります。

1、 血税を投入して日本に誘致

これは先日投稿したように、この噂は2月9日のtsmcの公式発表で100%自己資本でやりますというリリースが出ていたので、フェイクである可能性が高いです。また、経済産業省の助成金の対象となる企業は全て日本企業となることが決定されていますので、血税投入という情報を信じている人は、トーンを下げるべきだと思います。本当は信じるなと言いたいところなのですが、過去の自分自身の判断の否定にもつながることなので、なかなかできないという心理も理解できますので、まずはトーンダウンしてくださいという口調にさせていただきます。

※2021/5/31 経産省がtsmcジャパンと20社・機関とともに共同で研究開発することに基金を出すことを決定しましたので、「血税を使うはフェイク」は誤りです。しかし、基金の使いみちがどのようになっているかはまだ不明なので注目していく必要があると思います。

TSMCへ900億円プレゼント?は「嘘」

2、 tsmcは人民解放軍にチップを提供

そもそもこの情報はどこから来たのか?という点ですが、殆どの人が、ワシントンポストや大物YouTuberなどの情報をソースとしております。しかしながら、4月上旬に台湾経済部(経産省に相当する機関)の王美花大臣が、「tsmcは台湾、米国のどちらの輸出規制のルールに則って輸出されている」と声明を出しております。これだけでは恐らく「台湾政府は嘘をついているかもしれない」という人が出るかと思います。確かにこの声明だけでは、ミサイルに使われたことを100%否定するコメントではありませんよね。その点は認めます。確かにルールに則って輸出しても使われる可能性はあります。
では、そもそも論としてtsmcってどんなことをしているか?を理解しなければなりませんが、非常に難しい分野ですので、分かりやすく説明する必要があります。

tsmcがやっていることは、受託製造、つまりは下請けの製造会社ということです。
金属製の乗り物の模型を例にあげると、
この模型を作りたいと思った会社はPCと専門のソフトウェアを使って実際の自動車飛行機などから縮小された模型のデザインをすると思います。しかし、デザイン会社はこのデザインしたものを型を作って、そこに金属を流し込みパーツを作るという製造工程を行なう事が出来ません。こんな時どうするか?というと、この模型のデータを鋳造工場に持って行き、型を取って金属を流し込むという製造工程を外注するわけです。で、今回注目されているtsmcですが、この部分を担っている訳であります。で、金属を型に流し込んで、金属パーツが出来上がっても、製品と呼べるものでしょうか?ただの金属片の集まりだけですので、これを組み立てる工程が必要かと思います。しかしtsmcはこの工程を行なう事ができないので、別の会社へ完成した金属片を渡し、受け取った会社がパーツと説明書を加えて箱詰めしたり、組み立ててから箱詰めしたりするわけであります。

つまり何が言いたいか?というと、半導体というものは、tsmcのような1社だけで、どうこうできる分野の話ではないということです。それを理解しないで、解放軍のミサイルにtsmc製のチップが使われているから、tsmcは国防上大きな問題になりえる!と主張するのは、非常に危ないということです。
(tsmc製チップを解放軍が使う=tsmcを完全悪玉会社と考えるのは危険、という意味)

この理論が通じるのであれば、多くの日本人が持っているアップル製品のiPhoneやiPad、そして最近のアップルのパソコンのCPUはすべてtsmc製となり、tsmcを助けている人間ということになります。tsmcはケシカラン、と思っている人でiPhone使っている人いないですか?そんなにtsmc社が嫌いであれば即iPhoneを使うのをやめるべきです。

※2021年5月12日追記

2021年4月13日に米共和党の2議員は半導体製造機器の輸出規制を強化するよう求める書簡を米商務省長官へ出したというニュースがあり、この書簡をベースに「米国はTSMCに疑いをもっている」と主張する人がいますが、これはあくまでもマイケル・マコール下院外交委員会筆頭理事とトム・コットン上院議員に対して求めたことであり、決してアメリカ政府の見解ではない事、補足いたします。

ソース
https://gop-foreignaffairs.house.gov/wp-content/uploads/2021/04/edaletter.pdf

※2021年5月27日追記

そもそもこの書簡すら、tsmcを名指しで批判しているものではないことが以下動画で解説されていました。ちょっとでも疑問を感じたら八洲子さんのようにきちんと第三者の資料を用いた動画や情報もチェックする方がよろしいかと思います。

3、 tsmcは中国企業

これは確かに創業者のモリス・チャン氏は中国浙江省出身の人物ですが、tsmcはワンマンカリスマ社長でここまで大きくなったのか?という点とモリス・チャン氏の経歴も見なければなりません。まずtsmcはITRIという台湾政府の技術研究開発機関からスピンアウトして出来た会社で、スピンアウト後も李登輝元総統も半導体で台湾の将来がかかっている産業だと認識しており、且つ中共からの機密情報を盗もうと画策している事も知っている上で、政府がバックアップをして大きくなった会社であります。
そしてモリス・チャン氏も若い頃にアメリカに渡り、米国籍を取得しており、考え方は米国人的なものもあるので、中国人だというのはいささか乱暴すぎる言い方であります。
ちなみにモリス・チャン氏の発言は台湾経済界に大きな影響力をもっているものの、実は2018年にtsmcの経営から完全に引退しております。また、現在tsmcの幹部は皆さんが言う所謂本省人も、そして外国人もいるし、そして何より株主の構成を見ても米国系と台湾政府が主要株主であることを考慮すると、中国企業というのはいささかミスリードな主張かと思います。
この理論が通るのであれば、日清食品を創業した安藤百福さんはもともと日本人で、戦後台湾人になってしまい、日本国籍を取得したものの、創業当時は台湾国籍でしたので、日清食品は台湾企業と言えるのでしょうか?出自だけでどこどこの国の企業だと考えるのは非常に短絡的であると私は考えます。


いずれにしても、tsmcを敵視して得をするのは誰なのか?を考えるべきですし、様々な意見を見る事が大切かと思います。私も2年くらいYouTube活動をしており、どのようなトレンドが再生回数を稼げて、広告収入が多くなるかを何となくつかめております。昔から変わらないものとしては、不安を煽るような内容は非常に再生数を稼ぎやすいという事ですね。今であれば、tsmcは危ない、中共の台湾侵攻は何月だ、とかそういうような情報ですね。以前の私であれば、そういう話題をテーマにしておりましたが、それでは行かんということで、最近は爆発的な再生回数という衝動にかられるものの、なるべく事実を淡々と述べるクソ真面目な動画/ブログをアップしております。本業があるので、お小遣い程度の広告収益があればいいものですから。

ちなみに、このブログに反論コメントが来ると思いますが、その際はきちんと論拠となる資料を添えてくださいね。あと、私に対しては構いませんが、コメントした人に対しての誹謗中傷は許しませんので、コメント送信前にもう一度コメントを読み返してくださいね

2021年5月12日 編集(八度妖)
2022年9月29日 一部修正して再UPLOAD


なんと、国政政治学者の藤井厳喜先生に、動画がよくまとまっているという有難いお言葉を頂きました!!

YouTubeではイラストを用いた解説もしております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です