米国が中国大手コンピュータ領域への三度目の制裁
米国商務省は3月8日、中共企業が米国の技術を利用してスーパーコンピューターを製造し、中国解放軍の超音速ミサイルのシミュレーション施設を開発している事を非難し、天津飛騰信息公司等7社をエンティティリストへ追加し、その中には飛騰が設計を世芯-KY、生産をTSMCへ発注したものも含まれている。飛騰は2020年世芯-KYの売上高の39%を占めるほど貢献しているが、今年の売上高は25%ほどになる見込みで、衝撃的ニュースによって世芯-KYは5回のストップ安となった。
飛騰事件以来突然、投資家は不意を突かれた形であったが、実際には米国は3回目のスーパーコンピューター領域における中国企業への制裁であった。2015年4月に、オバマ政権はインテル社が中国の4つの機関に対して、「天河二号」のスーパーコンピュータCPUに使われているXeonチップの販売を禁止したことがある。2019年6月に、米国は再度、海光、曙光、無錫江南技術研究所等5つの機関をエンティティリストへ入れた。それに加えて今回の7社を加えたことにより、殆どすべての中国スーパーコンピューター研究開発機構がリストアップされた形となった。
中国は最も多くスーパーコンピュータを有する国家であり、全世界のスーパーコンピュータ上位500位内の214台を中国が有している。そしてその数量は米国の2倍近くとなっているが、パフォーマンスは上位の日本、米国には及ばない。しかも、自前で技術を作っていると大きな声をあげるものの、中国のスーパーコンピュータの多くはインテル、AMD及びIBMのCPUを使用している。
今回、米国が下した最新の制裁は、飛騰が以降現行のソフト設計チップを使用させず、TSMCにも受託製造をさせないものとなる。さもなければ米国の制裁を受ける事となり、それは米国が昨年実施したファーウェイへの制裁と同じものになる。米国企業は例外なく、今回の制裁について売上高に大きな衝撃があるが、商務省の決定を尊重すると考えている。
TSMCチップ F-35戦闘機にも用いられる
米国が飛騰を制裁した後にどのような動きがあるのか?マーケットは、制裁の影響は短期的であるが、最終的には中国が国内での研究開発への投資を強化する事につながると予想している。それは2015年に米国政府がインテルチップの輸出を禁止した後に、中国が明らかに国内の研究開発への投資を強化し、その1年後、当時世界で最も計算速度の速いスーパーコンピュータ「神威太湖之光」の運用開始をしたことに似ている。
チップの国内製造率を高めようと、中国は大金を払ってこの目標を達成しようとしていた。中国は既に国内でチップの設計能力は得ているが、それでもチップを輸入せざるを得ないほど深刻である。中国のチップ輸入額は3年連続で3000億米ドルを超えており、更に米国によるファーウェイへの制裁により中国企業は更にチップの備蓄を迫られる等、2020年の輸入金額は3800億米ドルに達するとみられている。
それ以外に、中国は国内での研究開発プロセスにおいて、少なからず外国の技術に頼らなければならない。例えばシノプシス或いはCadenceの電子系設計ソフトツール(EDA)、チップ製造にはTSMCの受託製造等が必要である。しかしながら、米中関係が徐々に悪化するにつれ、米国企業と台湾企業は中国とのビジネスもあり、この制裁が果たして適当であるかというジレンマに陥っている。
《ワシントンポスト》の記事によると、中共政軍&作戦概念研究所の研究員の歐錫富氏は、TSMCの「特殊な立ち位置」について言及し、米中両方にチップを供給する事は最終的には軍事目的に利用される可能性があると述べた。例えばTSMCがロッキードマーティン社のF-35戦闘機のチップを供給しているかの如くである。歐氏は、民営企業はビジネスをする際、ある項目に対してさほど考慮しないことがあると指摘。例えば、国防上についてであり、台湾は小国であり、各種の輸出規制条件が適用されず、逆に米国は輸出規制が完備されており台湾は比較的緩いために、このような抜け穴が出てきてしまう。
注意:これはあくまでも「ワシントンポスト」の記事を引用しており、自由時報の主張ではない
2018年世芯が暴露 中国顧客に核爆発への関与を疑う
世芯-KYのCFO王徳善氏は、飛騰がチップを軍事用途として使用しないことに署名をしており、飛騰も世芯-KYに対して会社の顧客はすべて平民であると告げ、1500と2000系列のチップは皆商用サーバーと個人PCに使われると言っていた。しかし《ワシントンポスト》は世芯-KYが2018年の新聞記事の中で、会社と中国国家スーパーコンピューターセンター(National Supercomputing Center)と協業していることを見つけた。当時、この機関は核爆発のシミュレーションに参与している事が疑われており、既に米国のブラックリストに入っていた。
しかし、あるアナリストは、企業がこの基準に沿って顧客を選ぶことはあまりあり得ないと率直に語った。バーンスタイン社のアナリストMark Li氏は、飛騰がもし制裁を受けれなければ、TSMCは注文書を断れる立場になく、また中国のチップ市場は非常に大きく、合法的なビジネスを放棄することは(TSMCの)株主が許さないであろうと指摘した。
米国の制裁令、TSMCはどちらかの選択を迫られる
台湾は中国の急速に成長する市場を重視しており、また中国は台湾からの科学技術と電子製品の輸入に頼っている。特に米中貿易戦争勃発後、中国は米国の技術に頼ることをやめており、米国の制裁により部品が提供されないことが起きないよう、台湾から製品を購入する動きになった。感染症が蔓延する中、世界のチップ需要の急速な拡大と中国による大量のチップ備蓄が重なり、2020年台湾から中国へのチップの輸出金額は3割増え、420億米ドルにも上った。
米国の制裁は、TSMCにどちら側に立つのかを迫ることを意味している。《フィナンシャル・タイムズ》は、2020年米国はTSMCの売上高の6割を占めており、中国は2割前後であることを指摘した。米国はTSMCの最大の市場であるが、中国も半導体市場は急速に成長している。米国はTSMCが中国から離れる事を望んでおり、更にはTSMCが持っているセンシティブな技術、例えばF-35のチップを掌握し、米国現地の工場で直接製造する事を望んでいる。
これ以外にも、今回の事件は会社が地政学リスクをどのように捉えるかの試験でもある。飛騰事件は世芯-KYの株価暴落を引き起こしたが、TSMCには殆ど影響はなかった。以前TSMCが米国のファーウェイ制裁により、2020年夏にファーウェイへの販売を暫定的に停止したが、アップル社iPhone12のリリースにより、TSMC 5nmの注文を増やすこととなり、失った注文をすぐに補う事が出来た。
しかし、これは他の台湾科学技術製造会社にとっては難しい事である。なぜなら中国の巨大な市場にかなり依存しているためである。《フィナンシャルタイムズ》は、北京当局が最近台湾海峡周辺での演習を強化していることを考慮し、台湾企業は更にこれを重視し、異なる客層を拡大していかなければならないことを強調している。
元記事
https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/3502219
2021年4月22日 編集・翻訳(八度妖)
2022年10月3日 再UPLOAD(八度妖)